十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

ペリー・メイスン第7話。1935年9月出版。初出Liberty誌★★★★★

 

私は早川文庫(1977田中西二郎訳。通称『門猫』)で読了。

門番の飼猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 3-7)

Liberty連載(1935-6-15〜9-17)、ESGは雑誌編集からもっと恋愛要素を!と求められ、努力してこの程度。まー向いてないんだよね。エネルギッシュだけど実はパッションに欠けてるESGは本質的に孤独な男。(ここら辺、別項でじっくり分析したいけど、そーするとネタバレがねえ…) でも見事、雑誌連載を勝ち取った。
前作の引きは角川の『義眼』(1963能島武文訳)に載ってる。ジャクスンからの手紙で、金持ちのジジイが門番のジジイの猫を追っ払えと言ってるので門番が困ってる、というのを読んで、面白そう!と興味を惹かれるメイスン 。
この依頼人が良い。脚の悪い、偏屈で、貧乏な老人。でも猫が唯一の友達なんだ。そんなジジイにほだされて、メイスンは事件に突っ込んでゆく。
カール・ジャクソン初登場。(one of his assistants, young lawyer) でもシリーズ21話以降のジャクソンとは違い、若々しい。ESGはキャラの一貫性に結構無頓着だ。
バーガー検事とのやりとりから「義眼」のすぐ後の事件。冒頭2章ですぐに戦闘モードに入るメイスンの姿勢が良い。とにかくケンカ大好きなんだ。


本作の見所はデラ。シリーズの中で一番活躍しているので、ファンは絶対読むべし!メイスンとデラの歳の差about 15と言う会話があり、冗談めかしているが、そのくらいの年齢差がありそうな雰囲気。とするとデラは27歳くらいだからメイスン42歳か。当時ESGは46歳、設定としては納得だ。
休暇はN.Y.K. Line(日本汽船)でホノルル、ヨコハマ、コーべ、シャンハイ、ホンコンへ…とデラが勝手に話を進めて、結局、今回は実現せず。でも後年、その旅が…(まあ、これは先のお楽しみ)
ちょっと腕を上げたホルコムとのドタバタ。とてもまともな判断力のバーガー。メイスンの策略は結構合法的。法廷では意外な証人が召喚される。


ところでFranklin teethはベンジャミン・フランクリンがつけてたような古い義歯という意味?色々調べたけど、有名な歯科医の発明品ではなさそう。フランクリンの義歯はどっかの博物館に展示されてるようだ。
そう言えば、この作品のアレはシリーズのほかの作品で使ってないと思う…(ネタバレになるのでハッキリ言えない。あとで何とかします)
早川文庫では、猫を呼ぶとき「タマや…」(うーん。ちょっとズッコケ。原文はkitty)
地名関係では、遂にカリフォルニアの実在の都市名が多数登場。でもメイスン事務所がある都市はぼかされてる。(何度も言うようにL.A.だってバレバレですが…)
犬猫対決では、ESGは猫派なのかな?(女性読者を狙ったあざとい作戦かもしれない…)
絶妙な展開と鮮やかな解決で最高傑作の一つ、いやデラ加点で最高傑作と言い切ろう。
※(2020-8-3追記) 雑誌のイラスト、どこかにないかな?と思って探したが無かった。代わりに連載開始時の表紙を貼っときます…

2020.08.01(シミルボン公開)