十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

ペリー・メイスン第2話。1933年9月出版。★★★★★

 

 

怒りっぽい女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 3-18)

私はハヤカワ文庫(『怒りっぽい女』尾坂力訳)で読んだが、こっちのタイトルが好きだし、現在最も入手しやすいグーテンベルク21(鮎川信夫訳)がこのタイトルなので、ここに登録。(ああ、そうそう。そういえばハヤカワ文庫は表紙絵が深井国さんで、エロ香る素敵なのが多くて、それでハヤカワ文庫を集めたっけ…) ただし内容から考えると(わがままで)すぐカッとなる娘、という感じなので「すねた」より「怒りっぽい」が適切だろうか。


最初は別キャラの長篇として書いたということで、主人公の設定がやや変わっている。メイスンものとしてシリーズ化すべし、と出版社からの助言があり、名前などを修正したという。

この頃のメイスン事務所の従業員はデラ(about twentyseven, タイピスト、速記者兼秘書)とエヴァリー(見習い)だけ。事務所の間取りの紹介あり(応接間2つ、図書室、速記室、私室2つ)。

私立探偵ドレイク登場は12章から。後年、出ずっぱりで何でも調べつくす万能性を発揮することになるが、この位控えめな方が良い。尾行ミニ講座やドレイク探偵の意外な過去も語られるのでファン必見。

 

本作からメイスンの無敗(絞首刑なし)伝説が始まる(前作では過去に吊るされた依頼人あり、という設定)。

 

法廷場面は本作がシリーズ初で、異例の弁護が炸裂。読者にはよく分からないが何か企んで準備してるメイスン、という後半の進め方が好き。ネタも分かりやすいので結末に「ああっ!」となるのが良い。

なお、自動車は1930年台の背の高い、ステップ付きの(いわゆるクラシックカー)を思い浮かべること!(残念ながらハヤカワ文庫の表紙絵だと1950年台の車だ…)

 

※ 昔、読み飛ばして気づかなかったが、ハヤカワ文庫で『太平洋岸判例集』(第5章冒頭)とある。初期シリーズで加州が舞台であることを作者が明かしたのは『奇妙な花嫁』(第5話1935年)が初めて、と思っていたが、もしやここが最初だったか?、と原文をあたったらCycとあるだけ。Cyclopaedia of Law and Procedureの略のようで「西海岸」という含意はないらしい。良かった良かった…(←何が?) この件、後の連載で触れる予定です。

2020.07.11(シミルボン公開)