十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

Queen Anne Is Dead

シミルボン投稿日 2022.09.10

 

今回は時事ネタです。

[2023-8-29注釈: 英国女王追悼、もう約一周忌なんですねなおタイトルは「そんなこと秘密じゃない、誰でも知ってるよ」という英語の慣用句]
エリザベス女王(二世)のエピソードで私の記憶に残っているのは、これ。

エリザベス女王(二世)があるスコットランドの村を訪ねられたとき、一家の農家で紅茶を出されたことがあった。その家の女主人はうやうやしく、女王陛下にミルク・ティを差し出し、自分もその紅茶をカップから受皿についで飲みはじめた。
それを見ておられたエリザベス女王は、その女主人と同じように、カップのお茶を受皿についでお飲みになったという話を耳にしたことがある。女王陛下のような方が、そんな作法でふだん紅茶を召しあがることは決してないが、この場合は女主人に敬意を表して、同じマナーで飲まれたものと思われる。

以前、私がシミルボン「紅茶を受け皿で」にちょこっと書いた件ですけど、これが本当のマナー、エチケットですよね。些細なことばかり気にするアホなマナー評論家はくたばれば良い。

 

さて本題です。

ある新聞の記事で、英国紙幣で肖像が使われたのは、エリザベス二世が最初、と書いてあったのですが、あれ?第一次大戦時のジョージ五世が最初では?と記憶にあったので、調べてみました。(画像はいずれもBank of England ホームページ “Withdrawn banknotes”から)

これが191487日に発行された£1 1st Series Treasury Issueで肖像(横顔)が左側に小さく乗っています。

ジョージ五世の横顔ですね。まあでもこれはバンク・オブ・イングランド発行ではなく、財務省発行券(Treasury note)なのです。

(2023-8-29追記: なぜ英国銀行券として発行されなかったのか、というと、当時の英国銀行券は全て兌換紙幣で、使用者から要求があれば金と交換する必要があったが、この財務省紙幣は、第一次大戦勃発による金の国外流出を防ぐための緊急措置。当時1ポンドは金貨のみで、金貨が大量に国外に流れはじめていたのだ。それで英国銀行ではなく、財務省が不換紙幣として発行したのだろう)

英国銀行が正式に発行した紙幣として、肖像が使われたのは、以下のが初です。

£5 Series B (発行1957-2-21から1963まで)


まあこちらは架空のキャラBritannaさんなんですが、立派な肖像ですよね。
では実在人物の肖像が「英国銀行券」で最初に使われたのは?

£1 Series C (発行1960-3-17から1978)
若々しいエリザベス女王の肖像です(即位は19522月なので8年後のこと)

なので、結論は

英国銀行券として、実在人物の肖像が使われたのはエリザベス二世が最初で1960年のことだった、

というのが正解でした。

Webの記事の表現は
エリザベス女王はイギリスの国家元首として初めて紙幣に描かれました。」
とか
「女王は英国元首として初めて紙幣に採用された。」
とか書いてありました。
原文はきっと Bank of England note なんでしょうね。

 

(追記: なぜこれが話題になったのか、考えると
「従って英国では王の代替わりによる前王の肖像の描かれた紙幣の通用を停止するか否かの前例が無い」
という事を言いたかったのだろうと思います。それで今回わざわざ女王の肖像の銀行券は今後も通用するよ、という(実に当然と思われる)公式アナウンスがあったのでしょう。なおジョージ五世の財務省発行券の方はジョージ五世の退位前に全て通用期間を終えているので、代替わりを考慮する必要はありませんでした)