十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

日本ミステリで最も有名なコイン

シミルボン投稿日 2020.08.02

コインネタが結構受けたので、すぐ思いついたやつをさっそく披露。これはWebサイト「ミステリの祭典」には書いてない小ネタ。

 

… 本のタイトルでカンの良い方にはもうバレバレですね。
ご存知、二銭銅貨。明治六年(1873)~十七年(1884)銘で発行。材質は銅98%+1%+亜鉛1%、直径31.81mm、重さ14.26g(小説の方は大正十一年(1922)九月に執筆、新青年 大正十二年(1923)四月増大号に掲載された。〜Wiki)
手持ちの明治十四年銘のものを500円硬貨と比較してみました。

 

かなりデカい。少なくとも補助通貨(円未満のもの)としては最大。通貨では明治四年の円銀(38.6mm)が近代通貨としては最大か。

乱歩による「自註自解」: 当時はまだ、あの大きな二銭銅貨が、僅かながら流通していた。直径三センチ余、厚さ四ミリほどの、どっしりと重い銅貨であった。

この「自注自解」は桃源社版乱歩全集(昭和三十六年〜三十八年)が初出らしい。
通用禁止は昭和二十八年(1953)、製造はされていなくても作品発表当時は通用していたのだ。乱歩は厚さを4mmとしているが、何故か数あるコイン紹介のWebページには厚さが明記されていない。
メルカリなどの出品者実測では平均2mm、私の安いノギスでもちょっきり2mmという結果。銅の比重から逆算しても2mm相当のはず。
という事は、乱歩は記憶に頼って書いていて間違ってる。でも誰も指摘していない? 割と重要なところだと思うんだが
あと、小説の本文中で「五千円(注、今の二百万円ほど)の懸賞」とあり、この注も乱歩によるもので桃源社版の「今」という意味。消費者物価指数基準でザックリ計算すると大正十四年の1円は、昭和四十年の341円で、令和二年の1418円だ(五年刻みのデータしか手元に無いので年数は直近を選んでいる)。これで計算すると、当時の五千円は(昭和四十年の171万円で)現在709万円。懸賞金がこの額なら結構やる気になるよね?
上記換算から、当時の二銭は現在28円。文中では按摩賃が六十銭(=840)とある。当時の蕎麦は他の資料によるとおおよそ十銭(=142)のようだ。(大雑把に物価1/4くらいのイメージか。とすると二銭銅貨の使い出は現在の百円玉くらいかな?)