シミルボン投稿日 2020.08.06
各務三郎編のハメット入門用短篇集。コンチネンタル・オプ(名無しの探偵)もの4篇、サム・スペードもの2篇、その他2篇を収録。なかなか良い選集だと思う。
二番目に収録された短篇「十番目の手がかり」The Tenth Clue (初出The Black Mask 1924-1-1 as “The Tenth Clew”)から。
それから私は薬きょうをしらべた。二個ともS・Wの四五口径拳銃用のもので、弾丸のやわらかい先端に深い十文字の切りこみがつけてあった。
原文で「薬きょう」はcartridges、「銃弾」と訳していただきたいところ。(「弾丸」だと次にも弾丸が出てくるので語がかぶる。最初を弾丸、次を弾頭とする手もあるが)「S・Wの四五口径拳銃用のもの」はS.W. .45-caliberで、これはタマのブランド名。床井先生の『ピストル弾薬事典』によると
.45 S&W スコーフィールド弾薬。別名 .45 S&W。スコーフィールド・リボルバーの弾薬だ。
これはロシアン・タイプで、スコーフィールドとほぼ同じものだが、若干違う。Wikiにこれしか無かったので…
SAA(いわゆる「ピースメーカー」)で主に使われる.45コルト弾丸(別名.45ロング・コルト)はこれよりやや長いタマ。なのでSAAはどっちも撃てるが、スコーフィールド拳銃は.45S&Wしか撃てない。幅広いタマを撃てる、 というSAAの互換性の広さが陸軍で採用され、広まった要因でもあるらしい。
両端が.45コルト弾、真ん中が.45スコーフィールド。Wikiより
探偵が一目でわかったのは、ヘッドスタンプが「45 S&W」と刻まれてたからだろう。
なお、コルト・ガバメントで使う自動拳銃用のタマは.45ACP弾で、これらとはまた違うものだ。
(この本の詳細な書評は以下をご覧ください)