十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

スーパーマンのNight Lifeとか、タイム・マシンの実際とか

無常の月 (ハヤカワ文庫 SF 327)

エスエフって絵なんだが(by 野田元師知ってる?)この短篇集に収められてる
「スーパーマンの子孫存続に関する考察」 Man of Steel;Woman of Kleenex (1969)
「脳細胞の体操 -テレポーテーションの理論と実際- Exercise in Speculation:The Theory and Practice of Teleportation (1969)
「タイム・トラベルの理論と実際」 The Theory and Practice of Time Travel (1971)
の論文が大好きで、あとキング・コングとフェイ・レイのネタもどっかにあったなあ今考えるとニーヴンって発想が中学高校生っぽくて、とっても恥ずかしい。(読んでた時は高校生。じゃあぴったりじゃん。でも当時から気恥ずかしい感じだった。)
だって大真面目にクラーク・ケント×ロイス・レインキング・コング×フェイ・レイの行為が成立するのか?とかを考察してるんだよ!中高生のエロネタだよ。
でもフィクションをあれこれ科学的に解釈するって、真面目にやればかなり頭の体操になるはずだ。


私はタイムマシンについては昔から大きな疑問があって(この論文で仕入れたかも?本が埋もれてて、今、参照できないんだが)
1秒前の世界に戻れるとして、それは宇宙のどの点なの?」
ということだ。
普通の設定だと、タイムマシンを使うと地球上の同じ場所に「時間だけ」遡って出現するんだが(もちろんそこに既に物質があったら大爆発だよね、という大きな問題は棚上げしといて)、その地点って座標的に考えると何処なのよ?という事だ。それを問題にしたらタイムマシンの不可能性がハッキリしちゃうから、あんまり論じられてないのだろうか(まあ私の読書範囲が狭いだけとも思う)
地球は自転と公転で物凄いスピードで宇宙を爆進してるし、太陽だって、我が銀河系だって宇宙のなかを超スピードで進んでる。じゃあ1秒後の世界って、宇宙絶対座標を使うと、遙かかなただ。自転だけでも秒速380m(時速1365km)で移動しているらしい… (宇宙絶対座標では秒速600kmのようだ。元NASAJAXA惑星科学者ジェイムス・オドノヒュー氏がそう言ってる)


私はエスエフで科学を学んだので(フレッド・ホイルの時間論も素敵だったなあ)ちゃんとした科学知識レベルは低いのだが(大体、数式は嫌い。なんか例え話にしてくれないと頭に入らない)あれこれいろんな原理を組み合わせたりして無理筋なことを妄想するのが好きだ。日本で言えば柳田理科雄さんの著作が趣味に合いそうだが、当時はエスエフ(及びフィクション全般)から遠ざかってた頃だったで、実はまだちゃんと一冊丸ごと読んだことがない。

 

最近の洋物ではこれ。(こちらも読んでない)

 

あっ、ニーヴンの前掲書、新版が出てるけど、肝心の上記の論文は収録されてないからご注意。(もちろんニーヴンの小説も面白いよ!感性が若々しいのが良い)

 

さて、くどくど小噺だ。(今回はパラドックスあります!)
今回はお馴染みタイムトラベルのパラドックス。さてどうなることやら。


私は多分狂ってる。誰もがそう噂している。
気づいたのは現在2019年の五年前、突然私は2014年に飛ばされたのだ。それまでは間違いなく2019年だった。これでは意味が通じない。でもちょっと我慢して聞いて欲しい。
2019
11月、私は27歳、決まった彼は居なかったがそれなりに楽しく暮らしてた普通のOLだった。ある朝目覚めると知らない寝室。身体も違和感ありまくり。全く普通に動けない。昨日飲み過ぎた?とぼんやり思ったが、昨日は仕事終わりでバタンキュー、そのまま寝たはず。今朝は大事な打ち合わせが手を見た途端、凍りついた。しわくちゃの汚い肌、自分の手とは思えなかったが紛れもなく自分の手。
恐ろしい病気に罹ったのだカフカの虫が頭をよぎった。確かに身体が満足に動かない。かろうじて自由に動くのは右側だけ。左側はほとんど何の病気だろう会社に電話しなきゃ、と思った。不思議と涙は出てこなかった。(号泣したのはしばらく後のことだ)
寝室にメイドが入ってきた。思わず笑った。部屋は、メイドがいそうな大金持ち風の寝室だったし、あまりに似つかわしく映画のシーンみたいだったから。
「奥様?どうかされましたか
「これは何?」自分の声に戦慄した。しわがれた嫌な声
話を省こう。私は色々調べて、今いるのは20145月、山梨県の別荘だということがわかった。大金持ちの未亡人で名前はAとしておく。それはもう信じられないくらいの大金持ち。でも左半身付随で、年齢は67歳。
私はエスエフ好きだったので、未亡人が他人と意識を取り替え、おまけに私を過去に吹っ飛ばしたのだ、と理解した。誰か若い身体が欲しかったのだ。人生を謳歌できる身体が。
もちろん私が狂っているだけ、 という可能性の方が、普通に考えれば高い。そんな事を実現できる超科学はどこにもない。有ればノーベル賞を何度も受賞出来るだろう。
だが私には私の元の記憶がある。そして2014年以降の5年間を覚えていた。おかげで財産を数百倍に出来た。その資産で自分の身体を取り戻すつもり。


(
長くなるので以下は概略。「私」Bは自分をみつけ、協力する科学者を見つけ、201911月の運命の夜、爆睡してる自分を誘拐し、派手な装置で意識を交換する。Aは多大な負荷に耐えきれず死に、Bは無事に自分を取り戻した。(次の朝、遅刻して上司にこっぴどく叱られたが…) Aだった時に財産をあらかじめB名義でケイマン諸島に避難させており、Bは科学者と幸せに暮らしましたという次第。パラドックスだよね?)

2020.07.31(シミルボン公開)