十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

米国の反科学

 

またまたガードナーだ。(ここまでの私のGardner率は異常に高い。他にガードナーいるかなあ。小説家のジョン・ガードナー(モリアーティを読んだだけ。あんま好みじゃ無い)、指揮者のエリオット・ガーディナー(←ちょっと違う!)…今、「ガードナー」でググったら、マーチンもE. S.も全く出てこない私の中では二人とも超有名なんですけど…)
原著2000年出版。元々はSkeptical Inquirer誌に連載したコラム。この雑誌は「超常現象と称するものを科学的に調査する委員会(CSICOP)」の公式機関紙とのこと。
ネタが豊富。UFO、物理・技術、天文学、進化論VS創造論、民間療法、社会科学、心理学、宗教。明らかにイっちゃってる奴らだけじゃなく、エジソンフロイトニュートンの暗黒面も記されている。
宗教がらみの話題が多いのも、キリスト教原理主義者が跋扈している米国ならでは。(トランプもその勢力を存分に活用している) 原著から7章削ってるのが残念。日本で馴染みが無くても当時の米国の状況としてちょっと知りたかったところ。何のネタが削られたのかなあ
「科学的」とは「検証可能」ということだろう。科学を超えるもの、となると「宗教」に似る。あなたは「奇跡」を信じますか?
従って、ヘンテコ理論の反対者は、実は部が悪い。頑なに信じてる人に百万言費やしても、ほぼ無駄。逆に嫌われたり、嫌がらせを受けたりしかねない。でも果敢に攻撃するガードナーのその姿勢が素晴らしい。
日本だったら、どうかなあ。理詰めより情感を重んじる文化が強いから、「君の言うことは、まあ判るが、世の中、理屈だけじゃ無いよね」という感じに流されそう。もちろん、こっちだって、現在、検証不能のものの存在を全否定するわけじゃない。直感だけで理解して言葉では今のところ説明できない数々の事柄が、結局、科学の進展により正しかったと証明されたことって世にいくらでもあるだろう。(禅みたいな超理屈は、理論というものに対する良い清涼剤だと思う) だから全否定が出来ないので、ヘンテコ理論の反対者は本質的に弱みを抱えている。(だからといってあり得ないとは言えないでしょう?大抵あり得ねーよ!絶対?うう、ほとんど。絶対じゃないんだー)
だが、信仰が高じて「科学的」なものの見方まで否定するなら、一気にオカルトに蝕まれ、暗黒面に転落する。全てが信じられない虚空の宇宙で「我」だけにすがる、我すらも信じられない、全てが起こりうる夢の世界だ
まあ大体騙す方は、現生的利益を追求してるから、そこら辺を嫌らしくほじくるのが最も効果的な攻撃かな? 相手も一番嫌だろうから。

 

さて、パラドックス小噺。スマリヤン先生が得意にしてた「嘘つき」ネタに挑戦。でも例によって本がどこに埋もれてるか探せなかったので、以下では普通の「嘘つきと正直者と分かれ道」のテーマをアレンジしてみました。

 

天国と地獄の分かれ道に可愛らしい女性が立っている。
道案内は彼女だけだ。
しかし彼女が常に正しいことを言う天使なのか、常にウソをいう小悪魔なのかは外見からはわからない。(←女性は大抵そうだあっ怒られる!)
その時々によってどちらかが道案内に立つことになっている。
天国と地獄の大抗争の末、決まった理不尽なルールだ。
天使or小悪魔は方角を身振りでしか示せない。
or左を指さす行動。これが決められたジェスチャー。それ以外の行動や言葉を発することは禁じられている。

さて迷える死人ホランダーが女性の前に立った。
質問は一度だけ。ワンセンテンス(句点で終わる一文。判断は常識を持って神と悪魔と11人の陪審員が行う)に限定。ワンセンテンス以上の質問には一切答えない。悪質な場合はそこで終了。
どう質問したら、正しい方向を知ることが出来るか?
伝統的な回答は、こうだ。(色々なバリエーションがあるが、この状況に合わせると…)
回答を読む前に自分でちょっと考えてね!その方が楽しいよ!

 

「あなたにして欲しいのは、まず天国への道を指さし、あなたが存在するなら指はそのまま、存在しないなら指を今と反対方向に動かしてください。」

 

説明しよう!
出会ったのが、天使で左が天国の場合: 左を指さす。そのまま。
同様に
天使・右が天国: 右を指さす。そのまま。
小悪魔・左が天国: 右を指さす。左を指さす。
小悪魔・右が天国: 左を指さす。右を指さす。

 

もちろん、ホランダーは普通より人生経験が豊富だった(まあ色々あったんだよ)ので、その論理パズルを知っており、可愛い顔に見惚れながら、上記の呪文を口にした。この娘が天使だったら良いなあ、と思いながら。
すると道案内は可愛らしい仕草で左を指差し、素早い身のこなしで右に変えた。スカートを翻し、素敵なふくらはぎを見せつけながら。

気を取られてたホランダーは危うく目的を忘れるところ。ああ、右が正解か。小悪魔なのは残念だが可愛いなあ天使はもっと可愛いんだろうか?
とか夢想しながら足取りも軽く右の道を行く。
素晴らしく荘厳で美しい扉が待っていた。
ついに天国に到達。我が苦難の生涯もここに終止符がと万感の想いを込めて扉の取手を握った途端、身体が動かなくなった。
さっきの小悪魔が扉の前でニヤニヤ笑ってる。
「この瞬間、大好き!」(以下は小悪魔の本音モードでお送りします!今更、嘘をいう必要がないので…)
ちょっと空いた扉の隙間から音は小さいが紛れもなく無数の阿鼻叫喚が溢れ出す。
「まさか!」
「その絶望顔、何度見ても楽しい!」
「だが君は嘘しかつけないはず。嘘×嘘は本当になる
「それを信じちゃうのが不思議なのよね本当のことを言ったら小悪魔じゃないじゃない。あなたは二つの文章をコンパクトに一文にまとめた。ならばどっちかに嘘をつくだけで、その文全体は嘘になるでしょ?悪魔学校の論理学初等科で習うんだけどな

2020.07.28(シミルボン公開)

 

[2020.07.28 04:12追記]

スカートを翻したくて、回答動作を二回出来るバージョンを作ってしまった。オリジナルは、イエスとノーを一回しか言えない設定で、解答例は「右の道が天国行き?」と聞かれたら、あなたはイエスと答えますか?

天使・右が天国: 最初の命題にイエスそれを受けて正直にイエス

小悪魔・右が天国: ノー最初の命題の答えと反対を言うのでイエス

天使・左が天国: ノーノー

小悪魔・左が天国: エスノー

私のバージョンも考え方は同じだと思う。

ここでも最終的に小悪魔が嘘を言ってないのが変だよね

 

[2020.07.28 04:18追記]

私のバージョンだと無限に文章を続けて、何回もスカートを翻さすことが可能だ。今、気づいた。全然、エレガントじゃないなあ。まあ今回は神も悪魔も大目に見てくれたんだろう