十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

ペリー・メイスン第4話。1934年6月出版。初出Liberty誌★★★★★

 

アレ?第三話どこいった?

 

単行本出版順でも、次の予告(あくまで米国初版での話だが)でも、公式の作品リストでも第三話は『幸運の脚』(19342月出版)で間違いないのだが、米国週刊誌Liberty(1934-01-131934-03-17)に連載したこっち(第四話)が実は三番目に書かれたもの。雑誌連載の都合上、出版が後回しになった。ESG筆が早いから、こーゆーことが後年でもちょいちょい起こっている。でもその頃には次の予告も辞めちゃったし、あからさまな続き感も出さないようにしてるので無問題。こっちだと長篇をまだ書き慣れてない時期なので本書冒頭に「オヤ?これ第四話なのに第二話の続きっぽい」と思っちゃう描写が残っている。

 

私が読んだのは創元文庫版。

吠える犬 (創元推理文庫 127-4 ペリー・メイスン・シリーズ)

掲載のリバティ誌は米国高級誌(Slick Magazine)の一つ。当時5セント(=103円、米国消費者物価指数基準1934/2020で計算)60ページ。Frank Godwinの描くペリー・メイスンが初登場している。(昔の雑誌は大抵イラスト入りなので、私はいつも挿絵が見たいなあ、と思ってWebを探すのだが、ほとんど見つからない。今回はebayで多分メイスンとデラを描いた挿絵(連載初回の号のもの)が見つかった。

他の例では、ブラウン神父の童心シリーズ初出Saturday Evening Post連載時の掲載ページが数号分Web公開されており、神父の初肖像を見つけ、とても嬉しかったことがあった。当時の膨大なイラスト群を見てみたいのは私だけ、とは思えないのだが、どーにかなりませんかね?) ESGは一番を常に狙うタイプなので、本当はSaturday Evening Post連載を希望していたようだ。(稿料が違うしね…)

 

さて、この物語は、冒頭から依頼人とその依頼がただならぬ雰囲気を醸し出していて、メイスンも過剰と思われるような対応を繰り出し、これどーなっちゃうの?と物語にすぐに引き込まれる。前作同様、ドレイク探偵局が活躍しすぎないのが良く、メイスンの大胆な行動(完全にやり過ぎ…)が痛快。意外と本格っぽい推理があるのも良い。タフガイ刑事(ただし間抜け)ホルコムは今作が初登場。助手フランク・エバリー君にメイスンが陪審論を丁寧に解説するところ(漫画で試合中にアナウンサーと解説者が喋くるシーンみたいなもの)があるのも初期シリーズならでは。

作者お気に入りの作品らしく、後年のシリーズでも(10話や第18話など)「吠え犬」は度々言及される。私もこれが最高傑作の一つだと思う。(この表現、やっぱ日本語では違和感ありまくり)

メイスンはのちの誰もが知ってる有名弁護士ではなく、まだ知る人ぞ知る有能弁護士、という感じ。そこも良い。(隠密行動がしやすいのよね)

 

次回は第三話『幸運の脚』をやります

 

メイスンとデラの挿絵、画像が添付出来ると気付いたので貼り付けてみました。第三章冒頭の場面です。(2020-7-13, 21:27)

第十三章冒頭の場面の挿絵も見つけた。女性はデラじゃないよ!メイスンがメイスンぽくて良い。(2020-8-2)

2020.07.13(シミルボン公開)