十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

本当に夢のような世界

 

Little Nemo 1905 - 1914

Little Nemo 1905 - 1914

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画像、Wikiからなら良いよね…

Little Nemoの世界はWEBでも見られるのですが、やはり紙で見たい。綺麗な刷りで、当時サイズならなお良い。私は昔々小野耕世さんのエッセイで存在を知り、わー素晴らしい(確か白黒写真だった。それでもとても良いものだ!と思った)、全部見てみたい、と思いながらも機会がなく、実際に洋書Little Nemo 1905-1914(Tachen 2006)を買ったのは随分後だったけど、フルカラーでため息が出るほど美しい絵柄と華麗な構成。1900年代初頭のものとはとても信じられませんでした。このイラストが毎週日曜日に届いていたとは何という贅沢…

夢と子供、という取り合わせが素晴らしい。だんだん意識がぼんやりしてきて入眠していく、全ての境界が穏やかに溶けてゆく幸福感とイノセンスな子供時代の幸福感が重なり合って、もーメロメロです。

私は翻訳より原語の英語で楽しみたい、意味をぐずぐず考えながら読み進めたい、そしてなるべく大きなページで眺めたい、と思って、後年、超特大(378x501mm)のThe Complete Little Nemo 1905-1927(Tachen 2014)も買っちゃいました。(これでも当時の新聞サイズにやや不足するという) ほぼ全部のエピソードが収録されており、本編と解説書の二冊構成、しめて8キロ超。重さもサイズも我が家の最大本です。開くのが大変なので、滅多にあけることはありません。でもうちにあるだけで幸せ。(普段は最初に買った洋書、サイズ247x322mmをひもといています…) やっぱり紙の本って良いですね!

今Tachenのホームページで探したら現在はいずれも絶版のようだ… でも1910-1927というのが出ていた。サイズは344X440mmで4キロ。全329エピソードとある。ううむ。これを買えば真のコンプリートか?(何で最初期のニューヨークヘラルド時代を収録してないんだろ?)

Amazon | Winsor McCay. The Complete Little Nemo 1910-1927 | Braun, Alexander | Illustration

あらためて今回じっくり眺めてみたら、途中からトリックスターのFLIP(緑のマスク?の小太り男)とIMPIE(多分PC的に現代では非難される土人←あっ!この言葉もダメか)がNemoそっちのけで大活躍。ネタ切れの時期には飛行船で各都市を巡回して名所を訪問する、何てエピソードも。私のイメージは最初期の毎回奇想を繰り出してた頃の作品群だった… コマの下にキャプションがあるやつで、1905-10-15から1906-3-4までのたった21回分だけだった。奇しくも最後に(目覚めの象徴として)FLIPが初登場している。それ以降は、最後のコマが唐突にNemoのベッドで一言、という構成が共通してるだけで、次の週にはストーリーが(何故か)続いて始まる冒険ドタバタ活劇になっちゃってて、見せるアイディアは豊富なんだけど、夢に連続性はいらないよね… 今までちゃんと中身を読んでませんでした。

ごく初期に1900年生まれと察せられるエピソードがあり、じゃあ永遠の5歳なわけだ。(この時25歳のNemoも登場。タイムマシンもの?ではありません。)

意外と1900年代初頭の習俗があまり出てなくて同時代資料として使えなそうなのは、ワタシ的にちょっと残念。まあファンタジーだから仕方ないところ。

あとは食べ物ネタが結構多いという印象。当時の子供たちはお腹を空かせてたんだろうなあ。

結局、今回も最大本を開かなかった。書庫の奥にあるんだもん… すげー重たいし… でも思い出だけで満腹です。(戦後のエピソード群と戦前版との比較は、気が向いたら別稿で(←と誤魔化す)。イヤイヤ。1914年7月26日に終了したこのシリーズが10年の歳月を経て1924年に復活したんですよ。これって結構興味深いと思いませんか?ただのノスタルジーだけかなあ…)

※ 謎は謎のままにしておきたいので、解説めいたものは一切読まずに書きました。見当違いなことタップリ、と思いますがご容赦。FLIPの顔の緑色は仮面で良いのかなあ… (口もとは肌色なんですよ。でも頭全体が緑色。)

2020.07.14(シミルボン掲載)