十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

鳩と鷹 (Dove & Falcon)

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ヘンリーとウィリアム、1900年代初頭。Wiki より。

ヘンリー・ジェイムズ『鳩の翼』(1902年出版、翻訳は青木次生「ヘンリー・ジェイムズ作品集3」国書刊行会2004)を最近ぼちぼち読み進めている。

いや、主人公?の心のうごきをこれでもか!と微妙な表現で書き継いでゆく、すごいねちっこい感じ(だけど嫌ではない)。動きはほとんど無くて、心のなかの微妙な感覚があっちへこっちへ流れゆくだけ。でも登場人物の繊細な思念の波がグイグイこっちに伝わる。その筆力がすごい。

分厚い作品だし、読んでて若干疲れるので、途中で落ちました。(たぶん気を取り直して、続きを読むとは思いますが…)

 

ハメットがジェイムズ・サーバーに『マルタの鷹』を書くにあたって最も影響を受けた作品だ、と言ってたらしいので、読んでみたんですが、いまのところ、反面教師かな?という感想。

つまり、心の動きを書くなら、これくらい書かないとリアルじゃないよ、という事を、これでもか、これでもか、という迫力で思い知らされたので、中途半端はやめて『マルタの鷹』では一切の内面描写を排除した、ということかなあ。

(でも何でサーバーに言ったのか?どんな機会に言ったのか?このエピソードは誰が伝えたのか?いろいろ疑問だらけですが…)

 

調べると、サーバー自身がニューヨーカー誌に書いていた。

The Wings of Henry James

By James Thurber (October 30, 1959 “The New Yorker”)


One night nearly thirty years ago, in a legendary New York boîte de nuit et des arts called Tony’s, I was taking part in a running literary gun fight that had begun with a derogatory or complimentary remark somebody made about something, when one of the participants, former Pinkerton man Dashiell Hammett, whose “The Maltese Falcon” had come out a couple of years before, suddenly startled us all by announcing that his writing had been influenced by Henry James’s novel “The Wings of the Dove.” Nothing surprises me any more, but I couldn’t have been more surprised then if Humphrey Bogart, another frequenter of that old salon of wassail and debate, had proclaimed that his acting bore the deep impress of the histrionic art of Maude Adams.

サーバーも、そりゃ微かには似てるがねえ… (どっちも鳥類だし、とか) でも全然違うよ、という感想。

この記事の主眼はヘンリー・ジェイムズなので、話の掴みに使われているだけ。あんまり深い意味はない。ハメットの冗談か奇を衒った発言、というのがサーバーの印象だったのだろう。

 

ハメット『マルタの鷹』のミステリ的感想はこちらで

https://mystery-reviews.com/content/book_select?id=2807:ミステリの祭典「マルタの鷹」

ついでに

https://mystery-reviews.com/content/book_select?id=15745:ミステリの祭典「マルタの鷹」講義