十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

写真の力・芸の力

六代目菊五郎―木村伊兵衛写真集 (ソノラマ写真選書)

(2020-7-23 カバー画像を追加しました)

218x208mmの変形版。本棚に収まりが悪いんだよね私はカメラに偏見と憧れを抱いていて、若い頃は写真を撮られるのが嫌いで、そのため一時期の写真は数枚しか残っていない。いっそのこと、西郷さんみたいに後世「その顔、不明」と言われるようにしようかな?と思ったが、さすがに就職したら証拠は残っちゃうよね… (ああそうそう。西郷さんは知人が描いた肖像画がちゃんと残ってるし、例のキヨッソーネの肖像も死後6年と近い。なのでアレが当たらずとも遠からず、というところだろう。全然違ったら知人から苦情が来たハズ。少なくとも眉毛ボーン!お目々パッチリは共通している。)
偏見は観光地で写真を撮るのが嫌で、ハタから見ると馬鹿みたいだし、写真を撮るのに夢中で、肝心の観光を疎かにしてるし、自分の写真写りが嫌だった。(←結局それだ)
憧れはライカを楽しげに語るチョートクさんとか、そーゆー歴史的、メカ的な機能美、日本の技術力、みたいなところ。ローライフレックス、可愛いよね。

 

さて、六代目だ。もちろん私は現役の舞台を知らないし、確か動く映像も残っておらず見たことない気がする。(あっ今調べたら唯一『紅葉狩』(1899)があって4分ほど、九代目團十郎と写ってるって私は見てるかなあこれ五代目菊五郎の誤り。初稿であまりに馬鹿な間違いをやらかしたので自戒のために残します。なお六代目の映像は有名な小津作品(1936)があった。私も見てるハズあのロングショットのやつかなあ…) まあ歌舞伎といえばこの人だよね。團菊じじい、の「菊」もこの人のことだろう。

 

歌舞伎については勘三郎のインタビューを読んでからの付き合い。勘九郎も軽やかで親しみやすかった。そこから純邦楽(←この用語嫌い)の古い音源を中心にレコード屋で漁ったり、NHK教育の古典芸能関係の番組は欠かさず見たり、とか。舞台は札幌に来た研修生(又五郎さん指導・監修)公演を一度見たきり。

 

その程度で語るんじゃねえ、と團菊じじいに言われそうだが、この写真集は良い。
昭和24(1949)年、和敬書店刊行の『六代目尾上菊五郎舞台写真集』を再編集したもので、昭和14年ごろ(当時六代目54)に撮った3000枚ほどの中から伊兵衛厳選の79枚。歌舞伎を海外に伝える視点でセレクトしたらしいので、当時の日本人からみたら立派なAlienに成長した現代日本人にはぴったりだ。
ピンぼけなんて全く気にせず、歌舞伎の動きを捉えている。どの構図も素晴らしい!(←天下の伊兵衛さまに何て失礼な…)
写真って、どうしても平板になっちゃう。そこが作者の心情を描ける絵画と違うところ。でも上手な写真には撮影者の心をちょっぴり込められるんだろうと感じる。
何故か絶版。現行本はこれか。(こっちも絶版?)

デジタルでアウトテイク入りで完全版を刊行していただきたい!(こーゆーのこそ電子本向きなんだが…)
伊兵衛 菊五郎 で検索すれば、ちょっとだけ片鱗を見ることが可能です

2020.07.15(シミルボン掲載)