私は子供の頃、内気で口下手で(今でもそうです。いやほんとに)英語の授業で、誤訳を見て閃いたのです。
『もしかして世界中の問題は、全てただの誤解から発していて、全ての誤解は正しい言葉を使えば解決するんじゃね?』
ああ青年時代の愚かさと幸福よ!
そんなわけで私は世界中の言葉を学ぼうと思ったり
Amazon.co.jp: 世界のことば100語辞典 アジア編 : 米雄, 石井, 栄一, 千野: 本
レトリックを学んだり
ハヤカワさんとか
フッサールとか
肝心な日本語とか
なんかを読んでわかったようなわからないような概念をもてあそんでいたものでした。
でも往々にして事実や論理では解決できない問題(最近の本では
ですね)があることに気づき、今に至るのです。
そういえば、ルイス・キャロルがアキレスと亀の無限問題という小品を書いていて、(以下は記憶に頼った再現)
ア「1+1=2、ゆえに2+1=3になる。」
亀「いや、その『ゆえに』が納得いかん。」
ア「1+1=2は良いか?」
亀「良い」
ア「ゆえに1+1+1=3となるだろう」
亀「そこに論理の飛躍がある」
(それでアキレスは前提が正しければ結論も正しい、という命題を挟み)
ア「ゆえに3だ」
亀「その『ゆえに』がおかしい。命題はわかるが、『ゆえに』が納得いかん」かくして無限の命題を挟んでも、亀は常に『ゆえに』を許さず、アキレスも呆れ申す、で幕。
に収録されていたという記憶があるのですが、本が書庫に埋れてて見つかりません…(かなりデフォルメしています。問題も違うし、アキレスの挟む命題もなんか違う気がする… でも本質は外してない、ハズです…)
読んだ時には、あはは、馬鹿言ってらあ、と笑ったものですが、実は一番真理を突いているかも。
ふに落ちるというのはmiraculousなワザなのでしょう。そこには無限の深淵があるのです。
(じゃあどうすれば?という答えは私が知りたい。まあ当面は虹の根元を目指して走って行くしか無いのでしょう…)
さて、最初にあげた『世界のことば 100語辞典』は、ヨーロッパ31言語、アジア28言語で、千野栄一と石井米雄が選んだ基礎語彙99語をどう表しているかを比べた興味深い本。それぞれの言葉の簡単なプロフィール、各担当者のことばの楽しみ方をテーマにしたエッセイ付き、そして100語目は各担当者が各言語の典型例として各自セレクト。
一見、無味乾燥なワードリスト(カタカナ 、原文字表記(アラビア文字やキリル文字やデーヴァナーガリーやハングルなどの場合にはアルファベット表記も併記)と発音記号だけ。解説は一部に注釈があるくらい)なのですが、同じ語をまとめて並べると何か見えて来ますよね。(なんか楽しいし)
例えば、「妻」は
アラビア: ザウジャ/エ、ゾーカ
現代ヘブライ: イシャ
トルコ: カル
アゼルバイジャン: アルヴァド
などなど。
収録言語は上記の他、
ウズベク、ペルシア、ウルドゥー、ヒンディー、ベンガル、ネパール、タミル、シンハラ、チベット、ビルマ、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ジャワ、フィリピン、広東、北京、モンゴル、朝鮮、沖縄(首里方言)、アイヌ(以上アジア編)
ノルウェー、スウェーデン、アイスランド、フィンランド、エストニア、リトアニア、ロシア、ウクライナ、ポーランド、チェコ、クロアチア、マケドニア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、現代ギリシア、英語、ウェールズ、ブルトン、ドイツ、オランダ、フランス、スペイン、カタロニア、ポルトガル、イタリア、ロマンシュ、バスク、アルメニア、グルジア、イディッシュ(以上ヨーロッパ編)
合計60言語(+1は日本語)の豪華企画。さすが千野先生、素晴らしい試みです。(世界初、とおっしゃっている。本当はエスペラント入れたかったんじゃないかなあ…)
あっ基本語彙99語の記載をしてなかった!まあそれは見てのお楽しみ、ということで…
2020.07.12