十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

古い単位の概説書

シミルボン投稿日 2020.08.17

単位の起源事典 (東書選書 79)

著者は長年、工業技術院計量研究所に勤めた第一人者。
西洋、中国、日本の尺度、面積、体積、重さについて歴史を遡って解説。
本書は「事典」というタイトルだが、辞書形式ではない。現代はWikiがあるので、事典機能は完全に負けているだろう。索引があまり充実しておらず探すのが大変だし、個々の単位についての踏み込んだ記述が足りない。
巻末の各国の単位一覧(英語表記が主)は便利。1800ほどの単位名を、全て現代の値に換算している(ただし代表的な説による換算なので、利用時には要注意)
同じ単位名でも時代による差、地方による差があり、一筋縄ではいかないようだ。
例えば日本の升。

大宝律令により「10合で升、10升で斗、10斗で斛」とされたが、三十年後(天平六年=734)には七街道でそれぞれ租税計算法の斛が
東山道: 2800寸、東海道: 2700寸、北陸道: 2800寸、山陰道: 3200寸、山陽道: 2700寸、南海道: 2800寸、西海道: 3200
と地域で異なっている。

(書き写しても、何を言ってるのかよくわからないが、地域で大きな違いがあったらしいことだけ理解した)
秀吉が「京枡」として統一するまで、各地でバラバラ。まあ遠距離の取引がなかったから不便も無かったのだろう。
中国では秦がやはり度量衡を統一している。(記録が不十分なので実態は不明、という) 漢も度量衡を統一しており、こちらは基準器が残っていて復元出来るようだ。
聖書で有名なキュービット(cubit)は「ひじ」の意味で、だいたい500mm(もちろん時代や地域によって色々だ)ノアの箱舟は長さ300キュービット、幅50キュービット、高さ30キュービットなので500mmで換算すると約20000容積トン、大型貨物船並みとなる。
モンゴルやアラビアは大帝国を築いたから、度量衡も統一したのでは?と思いついたが、本書には詳細が書かれていなかった。
不満は多いが単位の歴史の概説として読むなら、簡潔にまとめてあり、良い書物だと思う。