十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

脳内旅行第2回 ソウル 1983年ごろ

シミルボン投稿日 2020.08.16

私は新潮文庫(1988)で読んだ。
外国へ行ったことがない。飛行機嫌いだし、食事が心配だしチキン野郎なんです。
単行本出版当時(19841)は、1982年教科書問題(侵略を進出と言い換えた)の頃。1991年の元慰安婦の証言の数年前、『冬のソナタ(日本放映2003-2004)20年も前。当時の日韓関係も基本的に日本は謝罪しなきゃ(秀吉の朝鮮侵略とか大戦前の日韓併合とか)という感じが重くのしかかってて、なんか付き合いにくい隣人という感じだった。(負の歴史を勉強するのも億劫だったし…)
でもそれは昔の世代の罪であり、若い世代はそんなの関係ないよ、ニュートラルに付き合えば良いのでは?という思いが強かったから、本書のような感覚はありがたかった。
普通の異国として、対等に。気を使いながら手探りで旅をする。細かい脚注が旅のリアリティと当時のメンドくささを彷彿とさせる。
こーゆー状態を通って2000年代の雪解けが突然にやってきて、ああやっと日韓関係も大人の関係に、と思ってたら、また逆戻り。全然長続きしなかった。現在の日韓関係は最悪の状態だろう。雪解けの頃は韓国料理の店主と、まさかこんなに楽に語り合える日々が来るとはね、と笑いあったものだったんだ。
行きつけの韓国料理店が札幌に二店あって、ユッケジャンラーメンが美味しかったんだが、いずれも両国の関係悪化で店をたたんでしまった。その後、新型コロナがやって来たから、ある意味正解だったのだが
隣国は仲が悪いのは当たり前。英国と仏国、ドイツとフランス、その他いろいろ。だけど憎み合う必要なんてない。他者を理解しようと努力する、その意思がなかったら、この世は簡単に地獄になる。
だから、負の歴史もきちんと学ぶべきだろう。ただし、自虐ではなく、知らない外国の、他人の歴史を学ぶように冷静に。
40
年前の本書でも、過去は常にまとわりつく。嫌われているという思いで緊張してると「日本人、初めて見た」という普通の人々に出会ったり、在日コリアンで韓国球界に身を投じた選手に取材したり、幅広く韓国を捉えようと右往左往。地下鉄で自分の荷物を座ってる他人が膝に置いてくれる、なんて驚くべき慣習も記載している。無言のうちに行われる自然な親切らしいのだが、現在も残っているのだろうか?
イラストが豪華。いしかわじゅん大友克洋高野文子南伸坊。文庫解説は宮村優子(脚本家、『あんたバカぁ?』の方ではない)赤瀬川原平(あっ前回と繋がってしまった!第3回は関川さんのあとがき物件を探さなくては?) これ、著者の処女作なんだが
私としては、まずは札幌で美味しいユッケジャンラーメンの店をまた探すことからはじめることとしよう
BGM
P’ANSORI(nonesuch 1972)、手元にこれしか無かった