十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

太宰治原案「走れメロちゃん」アニメ版!高・ノユウチャン訳(オソマツ書房、2124年)

ノユウチャン星人、古くてわかりにくい作品を若者に理解いただくために素敵なアニメ翻案をお届けするチャン♪ 

 

メロちゃんはプンスカ。とってもとってもいたたまれない。最初の最初に、まあメロちゃんは噂を聞いただけなんだけど、なんだかひどく良くないらしいこの国のトップ、世襲が常に悪いとは言わないけど、代々この地域を管理監督しているというお方、頭の出来もどうやら悪いみたいだと、これまたネットの掲示板で読んだだけレベルの知識で、いきなり断定しちゃうのが、最近の若者よね。そいつを倒してあとはどうする、というビジョンすらないんだけど、とにかくプンスカなのでした。 

ロクな知識も知恵もないけど、まあだから、許さねえぞ、と心のネジが外れたら行き着くところまで行くのが羊たちと毎日遊んで暮らしてるメロちゃんの良いところ。笛だって吹けるのよ!と音楽には詳しい。と言っても作詞作曲が出来るわけでも無いんだけど。勝手気ままに歌って踊ってランランラン。わたし、悪いやつは許せない。プリキュアだって感情のおもむくままに悪いやつをやっつけて、それがスカッとするじゃん。悪いのは懲らしめなきゃ! 

朝イチでタルかったけど、ああ、朝といっても現代日本と違ってここは日の出後スグだからね。村と言っても現代日本と違って数軒の掘立小屋がちらほらじゃん。あるってあるって、歩くのは大好き。足腰がスラリとして痩せるし、隣のジョセタリーヌなんて毎日ノラクラ、出かける時は恋人におぶさってるから余計なところにお肉がタプタプ。まあフィリタリンはそこが可愛いって言ってるらしい。お前は骨と皮ばかりで胸がぺちゃんこで女としてのミリキがゼロだってさ。フン。大王、サダハル、アッチラ・ザ・フンをぶん殴る前にフィリタリンをヤっちゃおうか。 

十里離れている。この十里は上野樹里じゃ無くて栗より上手い十三里でも無くて、遠い遠い距離なんだけどー。普通の人なら2時間半。だけど当時、時計って全然正確じゃ無いし、昔の日本なら季節によって一時間の長さが違ったから、ギリシアでも多分そうだった。日の出から日の入りまで、それを12で割る。なるべく薄めないで。手っ取り早く酔っ払いたいし。 

ワタチ、親がいないのよ。夫もまださー。16歳の引きこもり弟がね。まあ親無しっ子って酷くいじめられんのさ。心折れるよ。弟はもう太陽を浴びないって。浴びないYouだよ。この音松におじきが縁談を持ってきてさ。強引なオジオジだよね。その子、働きものだって言うけど、どうなのかな?まあ見た感じは良さそうだったよ。飲んでみたけど楽しかったしさ。音松のどこがイイの?って聞いたら手がしっかりしてんのが好きだって。まあ好きならいいんじゃない。アタシにも早くいい男を見つけろよ、とオジオジをドヤしたさ。そしたら太れって。胸をタプタプさせろって。確かに音ヨメはミリキたっぷりだったけどさ。太るのヤダな。 

 

楽しいけど、疲れたのでもうやめる。ノユウチャン、これが君のスピリットだとおもうぞ。自分勝手にいじくり回すのは神になった気分だろうさ!わがままやるなら、少なくとも「翻訳」と名乗んなよ! 

 

<口直しに!>

メロスは激怒した。かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此のシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。

 

【追記2024-4-8 8:50】

ピアニストさんからいいねをもらったよ!翻訳も楽譜の解釈も同じですね!

素敵なヴァリエーションや「なんからに基づくピアノ曲」(ベートーヴェン魔笛に基づくヤツとか)という明確に明示された変奏や即興ならOKだけど、「バッハのゴルドベルクアリアを弾きますよ!」といってジミヘンの国家演奏風にバリバリやるのも、面白いけど、でもオリジナルを聴きたくなるよね!(スコット・ロスがオススメ。まあグールドも許すけど、あれは現代音楽風で18世紀の曲になっていない…)

最近の興味

子供の頃、私は図鑑を毎日眺めていて、街を走る車の名前を次々と言い当てていた、と親から聞かされたことがある。

その後は運転免許も持っていない「昭和のい⭕️り」と呼ばれるような男だったけど、最近、昔の車が愛おしくなって、ミニカーを集め出したよ。

これは1/43コレクション。1920〜1930年代の英米探偵小説を読んでるので、当時のヤツが多い。でも私は『サーキットの狼』リアタイ世代(あの人、人物がド下手なんだけど自動車を書くのが異常に上手だった…)だから、スーパーカー(死後か?)も好きだよ!

何故かランチアストラトスが大好きだったなあ…



バークリー「偶然の審判」初出の謎を解く?

あまりにトリビアルなネタ。古い探偵小説の重度のマニアしか喜ばないはず!

藤原編集室のWebサイト『本棚の中の骸骨』の投稿コーナー「書斎の死体」に掲載されている真田啓介さんの「The Avenging Chance の謎」(2013年5月改訂版)、これが本当に素晴らしいエッセイで、私は初めて中篇の存在を知り、真田さんの分析力に舌を巻いたのものです。それからずっと短篇小説The Avenging Chanceの「初出の謎」にぼんやりとした興味を抱いていたのですが、この度めでたく決着がつきそうな「事実」を見つけたのです!(まだ最終チェックはしてないのですが、海外から本が届くまでのお楽しみです…)

 

きっかけはWebサイト『ミステリの祭典』の私の感想文「World's Best One Hundred Detective Stories」に書いていますが、最近、作家・シナリオライターのRichard Connellを追っかけていて、全十巻で101作の短篇探偵小説が収録された1929年出版の大アンソロジーに至ったのでした。(以下『世界ベスト100探偵小説』)

出版社はFunk & Wagnallsで、英Wikiに項目がありますが、週刊誌The Literary Digest(1890-1938)や英語辞書、百科事典など学術参考系の書籍が中心のようです。

編集者Eugene Thwing(1866-1936)は、情報がほとんど無かったのですが、Quincy, Massachusetts生まれ、Adelphi College, Brooklyn卒業。Funk & Wagnallsの社員?(1882-1908原文にはconnected with.. とある)、1918年からはThe Literary Digestに参加。特に探偵小説界との関係は見出せませんでした。

『世界ベスト100探偵小説』の収録内容は、『ミステリの祭典』に詳しく書いたので、そちらを参照いただきたいのですが、ざっくりいうと「世界」は大袈裟だし(英米圏以外はフランスが三作)、同じ作家の同じシリーズから複数作品が収録されていたり、「ベスト」という割には定評ある傑作がほぼ収録されていない(参考まで、同時期のスタリット編Fourteen Great Detective Stories(1928、こちらは実に順当な傑作選)とのかぶりは2作のみ。チェスタトン作「青い十字架」とSamuel Hopkins Adams作The One Best Bet)、という感じで、吟味したアンソロジー、という印象ではありません。(ホームズもののベストが「三人ガリデブ」と「マザリンの宝石」だなんて誰も思わないはず。アガサさんの「ナイチンゲール荘」はこの時期のベストで問題なしですが… ほかに邦訳のあるものでは、レジナルド・フォーチュン2作、ファイロ・ガッブ2作、アブナー伯父1作(M・D・ポーストは全部で5作収録。ジョンケル2作は多すぎ、ランドルフ・メイスンは収録なし)、ルパン2作はどちらも『八点鐘』から、ソーンダイク2作、マックス・カラドス3作、四十面相クリーク3作は何で?)

そんなわけで日本では話題にならず、忘れられたアンソロジーになってしまったのも仕方ないでしょう。

邦訳のあるものを探す途中で、延原謙さんは間違いなくこのアンソロジーを所有していたようだ、ということもわかりました。当時の新青年の翻訳者は自分で原文を探してきて編集部に持ち込む、というスタイルだった、との乾信一郎さんの証言がありますが、新青年 昭和13年(1938)新春増刊 探偵小説傑作集に含まれる延原謙訳の小説は全てがこのアンソロジーに含まれているようです。具体的には

#72 玩具の家の喜劇 (E・ブラマー)

#55 十一對一 (ヴインセント・スターレツト)

#87 指 (A・J・リース)

#13 猫室(エドウイン・ベヤード)※

#63 良人のない妻 (E・スネル)※

(#は本アンソロジー収録順の通算番号。詳細は『ミステリの祭典』をご覧くださいね。※付きは原文と未チェック)

そして延原謙さんは新青年 昭和9年(1934)2月春季増刊 傑作探偵小説集 (v15#3)にこの駄文の主眼であるアントニー・バークリー作「偶然は裁く」を翻訳しています。これも『世界ベスト100探偵小説』由来であることは多分間違いないでしょう。

 

真田啓介さんの「The Avenging Chance の謎」では、

「偶然の審判」 の書籍形態での初出が The Best Detective Stories of the Year 1929 (Faber, 1930) である

とされているのですが、実はWorld's Best 100 Detective Stories(Funk & Wagnalls 1929)の方が一年早いのです!(これはFictionMags Indexにも書かれているので真田さんももうご存知でしょう)

本アンソロジーは1929年出版なので、The Avenging Chance初出の通説Pearson's Magazine, September 1929は、編者が読んでアンソロジーに収録するには間に合わないはず。実際、このアンソロジーなかで一番雑誌発表が遅いのはArgosy Allstory Weekly 1928-11-24のフットナー作「ファーンハースト邸の殺人事件」#37です。

そして真田啓介さんが疑問を呈しておられる、「偶然の審判」 のコピーライト1928年問題(サンドー説では「1928年発表」となっているが、根拠が見つからず、誤記かもしれない)は、『世界ベスト100探偵小説』のThe Avenging Chance のコピーライト欄に記載されているのでは?(このアンソロジーの各作品ごとのコピーライトは各作品の最初のページの欄外最下段に記されている)

*コピーライト表示の例。最終行に注目!

残念ながらInternet Archiveには本アンソロジーの2,7,10巻が欠けています。The Avenging Chance(第2巻収録)のコピーライト欄を確認するには、原本にあたるしかないのです… さっそくeBayでポチりました。到着は4月14日の予定。

 

私は何かの米国雑誌に1928年に発表された、という仮説を立てています。残念ながらいつも役に立つFictionMags IndexにもThe Avenging Chanceの初出はPearson's Magazine, September 1929となっているのですが… (FictionMags Indexの登録雑誌の充実ぶりから考えると有名な米国雑誌には掲載されてないのかなあ…)

英国での初出はPearson誌1929-09で間違いないと私もずっと思っていて、真田さんは新聞連載の可能性もあるかも?としていますが、逆(雑誌→ローカル新聞)はあっても「新聞発表が先」は作家の旨みが少なすぎて(私は雑誌の初回連載権の方が当時は高額だったのでは?と睨んでいます…)まず有り得ないのでは?と空想しました。それに新聞なら連載権を短篇小説で、というのはメリットが少ない。定期購読を伸ばすという営業戦略なら長篇に限るのでは?

それにPearson誌当該号は表紙絵がThe Avenging Chanceで大々的にフィーチャーしてるんですよ。

再録ならこんな扱いにはならない、と思います。

米国雑誌が先で数か月後に英国雑誌というのは、当時たくさん前例があり、なんせ米国の方がお金持ちなので世界初出権が米国に持っていかれることは良くありました。本アンソロジーの#51 ドイル作「三人ガリデブ」はストランド誌(1925-01)を差し置いてコリヤーズ誌(1924-10-25)が先に発表しています。

 

<追記>

結果に愕然!

コメント欄(承認制)を用意しましたよ。https://danjuurockandroll.hateblo.jp/entry/2024/04/16/134429

長すぎた感想: ドロシー・L・セイヤーズ『毒を食らわば』(1930) ★★★★★★☆☆☆☆

Webサイト『ミステリの祭典』でも全部収まらないほど大長篇となった。そのため続きをこっちに入れました。

前半は『ミステリの祭典』でお読みくださいね。(無事、全部『ミステリの祭典』に収まりました… 良かった良かった。こっちも残しておきます。)

p54 ふざけた歌に出てくる歯に穴があいた男(the man with the hollow tooth in the comic song)◆いろいろ検索したが調べつかず。[BP]でも出典不明。幻戯(g053, 注036)はIrving BerlinのI've Got A Sweet Tooth Bothering Me (1916)を提案、なるほどね!

p56 自分の墓にかける柳の冠(twine willow-wreaths for his own tomb-stone)◆訳註は"柳の冠"は「失恋した者が被る」としているが、[BP]によればweeping willow signified mourningで、ここの意味はa reminder of the Resurrection and the lifeであろう。

p64 がーんと来て(stunned)◆ 幻戯(g060)「完全にまいってしまって」、早川(h42)「全く息をのんでしまって」

p64 『鮮やかな幻の園を気ままにさまようことが…』(However entrancing it is to wander unchecked through a garden of bright images...)◆ 訳註はちょっと誤り。ブラマ作 “The Story of Hien”(短篇集“Kai Lung’s Golden Hours“(1922)に収録)より [BP]

p65 白い蛆虫(white slugs)◆ピーター卿の自虐

p68「余剰」(“superfluous”)◆ 幻戯(g064, 注041)「余った女」 、早川(h32)「余計者」ここは戦争で若い男性がたくさん死んで「余った女」が社会問題になってたことを示している。『箱の中の書類』にもそういう表現があった。幻戯の注ではそれはジャーナリズムが作り出した不安だった、としている。未調査

p68 いきのいい若者(Bright Young Things)◆戦後(WW1)の伝統破りの若者たち、a group of Bohemian young aristocrats and socialites in 1920s London (英Wikiに主要メンバーのリストあり) 同名の懐古映画(2003, 原作イヴリン・ウォー)がある(DVDを入手しました!未見)。幻戯(g064, 注042)「陽気な若者たち」、早川(h53)「若くて{いけ}るような娘」({ }内は傍点)

p69 <僕の猫舎>(My Cattery)

p69 あのなんとかいうドイツ女(like that German female, what’s her name)◆Gesina (or Gesche) M. Gottfried(1828年逮捕)[BP]

p70 ジョージ・ロービィ(George Robey)◆ミュージックホールの大スター(1869-1954)。作者はチャップリンが好み、というわけではなく、登場人物に合わせたものだろう

p71 すてきな頰髯にみんなうっとり… 今なら笑われる(with whiskers which we all admired very much, though today they would be smiled at)

p72 死んだら心臓に... と書いてあるのが見つかる(When I die you will find .... written on my heart)◆メアリ女王の有名なセリフは"when I am dead and opened, you shall find Calais engraved on my heart"、フランス軍の攻撃でカレー(英国が保持していた最後のフランス拠点)が落ちた1558年5月のこと。幻戯(g068, 注048)

p73 ティーポットから最大限引き出す(getting the utmost out of a tea-pot)◆コツが書いてある

p74 ファラー学長の本(Dean Farrar’s books)◆ Frederic William Farrar(1831-1903)、引用は“St. Winifred’s”第22章から[BP] Dean of Canterbury(1895-1903)なので「司祭」が適切か。幻戯(g069)「ファラー主教」

p75 プラスラン公爵---あれが自殺だったとすれば(There was the duc de Praslin, for instance — if his was suicide)◆Charles-Louis Theobald, the Duc de Choiseul-Praslin, 妻殺しで逮捕されたが裁判前に砒素で自殺した(1847) [BP] 実は自殺は嘘で、密かに国外逃亡を許され、英国で余生を送ったという噂があった。この事件を元にしたMarjorie Bowenの小説 Forget-Me-Not(初版は米国1930、Joseph Shearing名義でLucile Cleryというタイトル)は売れたようだ。(英Wiki)

p76 弱気な心(faint heart)◆元の諺はfaint heart never won fair lady、Webで調べるとThomas Lodge“Rosalind: Euphues' Golden Legacy”(出版1590, 沙翁’As You Like It’の元ネタ) Section 17に用例があるが、ここでも諺っぽい感じで使われてるので起源はもっと古そう。(Web上にInternet Shakespeare Editionsという便利なサイトあり。沙翁のフルテキスト(異本も網羅)だけでなく関連文書まで収録。すごいなあ)

p76 ミクルマス期は二十一日に終わり… 今日は十五日… ヒラリー期は一月の十一日から(The Michaelmas Term ends on the 21st; this is the 15th. … and the Hilary term starts on January 12th)◆イングランドの裁判カレンダーは一年を四つに分ける。Michaelmas term(10-12), Hilary term(1-4), Easter term(4-5), Trinity term(6-7) (英Wiki “Legal year”) 不揃いなのが古い伝統っぽい。ここの「15日」は全体の流れから1929年12月15日で確定。この日は日曜日なのでp52からここのくだりまでは同じ日の出来事なのだろう。ピーター卿は急いでいるはずだから

p77 光の道筋(the path of the light)◆アインシュタインは『箱の中の書類』にも引用されてた。

p77 女にめろめろ(goopy over the girl)◆ goopは米国作家Gelett Burgess(1866-1951)の造語。Goops, and How to be Them (1900)などに登場する馬鹿げた行いをする禿げ丸頭の子供?のこと。幻戯(g072)「ぞっこん」、早川(h59)「いかれてる」

p78 ジャック・ポイント(Jack Point)◆Gilbert & Sullivan "Yeomen of the Guard"の登場人物 [BP]

p80 そっちがイングランドを留守にしたりするからだ(You shouldn’t have been out of England)◆ p28参照。

p81 マードル夫人(Mrs. Merdle)◆ Dickens “Little Dorritt” Chapter 3 の登場人物。ピーター卿の愛車は『不自然な死』(1928)で初登場(車種はDaimler Twin-Six、レース用のボディとの記載あり)

p81 十二本の排気筒(all twelve cylinders)◆ 浅羽さんは気筒と排気筒を混同してる。幻戯(g075)「十二気筒エンジン」、早川(h62)「十二気筒」

p83 戦後世代(post-war generation)

p85 『妹と背の道』(Voice that Breathed o’er Eden)◆ [BP]に歌詞全文あり。

p88 五十ポンド

p88 教会鼠(proverbial Church mice)◆ Wikitionary "poor as a church mouse" 参照

p90 銀行券をひと摑み(a handful of treasury notes)◆ treasury note(元は大蔵省が戦時中に臨時発行したもの)は£1及び10s.紙幣の二種類しかない(1933年通用停止)。1928年11月から正式に英国銀行券に切り替わった。ここは「少額紙幣」という意味でtreasury noteという語を使っているのだろう。英国銀行券は£1000まであったのだ。なお a handful of は「片手にいっぱい」ではなく「ほんの少し」の意味らしい。幻戯(g082)「手に載せられるだけの法定紙幣を」、早川(h68)「一つかみの紙幣を」

p90 定価の七シリング六ペンス… 三シリング六ペンス… 一シリング版(the original price of 7/6… the three-and-sixpennies… the shilling edition)◆ まだペイパーバックの無い時代。当時の小説本は最初7/6dで出て普及版3/6dから廉価版1/- に至る。

p91 儲けとは無関係の評価(シュクセ・デチーム succès d’estime)◆発音はシュクセ・デスチムだが… 仏語借用の英語表現で「〔一般には受けず〕批評家だけに受ける芸術作品」

p91 水の上にパンを投じる(cast your bread upon the waters)◆ フリーマン『青いスカラベ』でも引用されていた。無駄な行為のようでも、後で見返りがあるよ、という聖書句(Ecclesiastes 11:1)

p91 『よき業を豊かに供えたる者に、み手より豊かに報い給わん』(plenteously bringing out good works may of thee be plenteously rewarded)◆ 英国教会祈祷書の三位一体後第25主日(Twenty-fifth after Trinity)の集祷文(The Collect)の文句。「三位一体節後〜」はバッハのカンタータでお馴染みですよね?

p92 そこそこよく売れていました--国内で三千から四千部(books have always sold reasonably well—round about the three or four thousand mark in this country)◆ アガサさんの『アクロイド』(1926)はよく売れたと言われるが5500部らしい。『スタイルズ』は2000部近く。

p92 ZZZZが釈放されてしまえば--(When ZZZZ is released--)… 『されれば』じゃなくて良かった(I am glad you say 'when.')◆ これだと違いがちょっと微妙。幻戯(g084)「無罪放免となったときは--」「"ときは"と言っていただけて嬉しいです」試訳「ZZZZが釈放された後は--」「"された後"とは嬉しい言葉」

p93 連載化権… すぐに収益になる(serial rights… immediate returns)◆ セヤーズさんの実感か。米国雑誌で『雲なす証言』が連載されてたのは知ってるけど、他はどうだったか。アガサさん『茶色の服』(1923〜1924連載London Evening News)は500ポンドで売れた。アガサさんは売れっ子作家で、他の長篇も大抵雑誌や新聞で連載している。

p93 『鍋の中の死』(Death in the Pot)◆ 架空の探偵小説のタイトル

p93 トルーフット社(Trufoot)

p101 国家対ヴェイン(R. v. Vane)◆ ここは「国王対ヴェイン」が正しい。英国では刑事事件の訴追側は王(国王Rex, 女王Regina)、裁判は人対人の争いだ。幻戯(g092)も創元と同じ。早川(h76)「ヴェーン事件」

p102 ウェストモアランド県ウィンドル町(Windle, Westmorland)◆ 幻戯(g093, 注059)によるとモデルはケンダルKendalらしい。[PWC]にはKendal, known for the manufacture of shoes and bootsとあった。

p103 陪審員というものはあてになりません。ことに、女も陪審員になれる今は(juries are very unreliable, especially nowadays, with women on them)◆ 女性が陪審に加われない、という制限を撤廃したのはThe Sex Disqualification (Removal) Act 1919らしい。Web 記事How women finally got the right to jury serviceに詳細があった。

p104 スカートの長さもお約束の膝下4インチ(their skirts are the regulation four inches below the knee)

p106 ビノリー(Binnorie)◆ 「訳註 スコットランドのバラード」幻戯(g096, 注063)殺人バラッドThe Twa Sisters(Child 10; Roud 8)、英Wikiに項目あり

p110 塞いだ(stopped)◆ 狐狩りで、事前にキツネの巣穴を塞ぐ準備作業のこと [BP]

p113 燻製鰊(kippers)

p120 郊外住宅地(suburban)

p120 ハンガリーの歌(a Hungarian song)◆ ジプシー風?今はロマか

p122 長いスカート(long skirts)◆ これを不道徳と結びつけるとは…

p123 僕はもうじき四十なんだ(I’m getting on for forty)◆ 後ろのほうでは「道化者ぶるにはもう歳(was surely getting too old to play the buffoon)p183」と人から言われている。作者がまだ若かったからこんな感想なんだろう。歳をとっても実はあんま変わらないよ、とオジサンは思う。

p124 クルーソー(Crusoe)◆ 幻戯(g109, 注074)

p124 千九百六十年の革命(the revolution of 1960)◆ 当時はこの年で十分に未来だった。

p126 代戦騎士(champion)◆ ああそうか。元の意味はそういうものだったんだろうね。裁判の決着を決闘で決めていた時代があったのだ。かつて英国の裁判で陪審の裁きではなく古式ゆかしい決闘を望んだ人があり、法的には当時でも有効だったので困った、というエピソードを読んだ記憶がある。

p127 六パイントの水(six pints of water)

p127 ぎゃふん(Crushed)◆ 幻戯(g112)「失敗」 早川(h90)「やられた」

p128 例のホームズの原理(the old Sherlock Holmes basis)◆ ありえないことを除いて、残ったものが真相というやつ

p128 コーヒーをシロップにしたがる(liked to make their coffee into syrup)◆ 西洋の男は甘々コーヒーが好きなのだろう。エスプレッソも甘々が本場流。

p129 借金魔や、手を握っててほしがる人ばかり(too many borrowers… and too many that wanted their hands held)◆ ダメ男に惚〜れるなよ

p130 女の天才は甘やかしてもらえない(Women geniuses don’t get coddled)

p130 すぐ逃げて--何もかもバレた(Fly at once—all is known)◆ ノックス『陸橋殺人事件』(1925)では“All is discovered; fly at once.”、そちらに詳しく書いたので参照ください。幻戯は残念、注無し。早川(h98)は誤訳。

p131 脱水機(a wringer)◆ ローラー式脱水機。間に洗濯物を挟み、圧迫して水気を搾り取るやつ。

p132 クランペットをあぶって(toasting crumpets)

p133 コックさんって呼ぶ人が多い(callin’ you Cook as they mostly do)

p141 毛布の反対側で遊んで(taking his amusements on the wrong side of the blanket)◆   面白い表現。幻戯(g123, 注084)は創元と同文。試訳「誤った毛布の中でお楽しみを」

p141 コレラが流行った時に死んで(died in the cholera)

p142 半日休みは水曜(Wednesday is my ’arf-day)◆ 使用人の休み。半休しかなかった?

p143 サルーン・バーの看板娘(the life and soul of the saloon bar)◆ サルーン・バーは「訳註 パブの仕切りのうち上品なほう」 幻戯(g125, 注086)「パブの上室」

p144 決められた時間のあとで酒出し(drinks after hours)◆ 幻戯(g125)「時間外の酒の提供」

p144 壜売り(serve in the jug and bottle)◆ 「訳註 客の持参した壜に酒を詰めて売る商行為」幻戯(g126, 注087)「容器持参」店外で飲むために客が自分で持ってきた容器に酒を入れる。家庭冷蔵庫も無いし、ガラス瓶による販売は高価になるので普及してなかったのかも。

p145 いい名前だった(it’s a better name).… 所帯持つとなったら、女はいろいろ犠牲に(a girl has to make a lot of sacrifices when she marries)◆ 苗字を変える嘆き

p145 四ペンス売り(the four-ale business) ◆ 「訳註 エールを1クォート四ペンスで壜売りすること」 幻戯(g127)「安ビール」 ここら辺は幻戯の方が意味がわかりやすい。Webにギネスの1パイントの値段史ポスター(1900-1992)があるが直近で1928年が10d.、[PWC]は本来1パイント4ペンスの意味だが、資料によっては1 quart(=2 pint)で4 penceと読めるのもあり、だって。

p145 この前の八月の銀行休業日(last August Bank Holiday)

p146 看板は十一時◆ 幻戯(g127, 注089) 当時のパブは夜11時で閉めるのが多かったようだ

p146 八杯よか(over the eight)◆ 「訳註 第一次大戦中はビール八杯が飲める限界とされていた」 Wikitionaryには“one over the eight”の形で1920s UK origin, from the idea that one can drink eight pints of beer without getting drunk. ビール八杯以上で「へべれけ」ということ。

p149 ニュース・オヴ・ザ・ワールド(News of the World)

p155 おなじみの田舎牧師(the usual country parson)

p163 ウッドストック型のタイプライターで打たれた(typed on a Woodstock machine)◆ イリノイ州ウッドストックの会社、1907年創業。シアーズ・ローバック傘下。Model No. 5(1917-1940?)がロングセラー。幻戯(g141)の割注で何故か「1916年に発売」と断定している。モデル5で間違いなさそうだけど…

p164 家族の聖書から… 名前を消して(erased… name from the family Bible)◆ 「訳註 一族の出生・結婚・死亡を見返しに記す習慣があった」Family Recordというページがあって、実際のものがWebで見られる

p170 バーバラ(Barbara)◆ ピーター卿の初恋か

p170 『バルバラ…』(Barbara celarent darii ferio baralipton)◆ 訳註及び[BP]

p170 僕はもちろん、ベイリアルの学生でした(I was a Balliol man)

p171 ばか話(talk piffle)

p172 メガセリウム信託(Megatherium Trust)◆ 架空のもの

p174 晩年のウィムジイ(when he was an old man)… 以降二十年間(for the following twenty years)◆ ありゃりゃ… 未来を語ってる。

p175 『エクスプレス』紙に出ていたジェイムズ・ダグラスの記事(James Douglas’ article in the Express)◆ James Douglasは架空だろう。Daily Expressかな?

p176 図書館の会費(a library subscription)◆ 「訳註 当時は会費制で維持されていた」 幻戯(g151, 注105) そういう会員制図書館もあった、ということらしい

p176 最も清らかな文学(the purest literature)◆ なるほどね

p177 槙肌作りや… 郵便袋を縫ったり(picking oakum or sewing mail-bags)◆ 刑務所の労役

p178 顔はパンケーキみたいに平凡(she’s as plain as a pancake)

p180 お茶の時間なんぞ、発明されなければよかった(nobody had ever invented tea)

p180 新聞記者の言い草じゃないが、何か露見したか?(Has anything transpired, as the journalists say?)

p182 問題は僕がキリスト教徒(the trouble was that I was a Christian)◆ 英国ではセヤーズさんが反ユダヤとの評があるらしい。でもゴランツはユダヤ人。前の版元ベンもユダヤ人。ここの記述もむしろ親ユダヤ

p183 花婿の友達にも何か役目(some sort of bridegroom’s friend comes into it)… 帽子は脱がん決まり(You keep your hat on)◆ ユダヤの結婚式の作法のようだがちょっと曖昧な知識

p184 晩餐とダンスと、何とも疲れるジェスチャー遊び(dinner and dancing and charades of the most exhausting kind)◆ クリスマス・パーティだねえ。

p186 昔風な寝巻がお好み… スプーナー博士みたいに(prefers the old-fashioned night-gown, like Dr. Spooner)◆ なぜここにスプーナー博士?(スプーナリズムで有名, My Queer Dean!) Webを漁ったら次の逸話を発見。Mrs. Grey, daughter of one of the masters of Rugby School, is reported to have taken a banana ... and have said to Dr. Spooner. 'Do you like bananas?' He suddenly roused from a reverie: 'Er, what? Well, I must confess I prefer the old-fashioned nightgown!" (Rossell Hope Brown "The Warden's Wordplay: Toward a Redefinition of the Spoonerism"(1966)より) バナナとパジャマを聞き間違えたのだろう。ここは幻戯(g159, 注114)でも拾えていない。[PWC]でも博士のナイトガウンの趣味は不詳、としているよ

p189 オービュソンの絨毯(an Aubusson carpet)◆ 高級なものなんだろう。幻戯(g162)に割注あり

p191 映画館(cinemas)… おやつのメンデルスゾーンと、『未完成』の切れっ端(snacks of Mendelssohn and torn-off gobbets of the ‘Unfinished.’)◆ サイレント映画の時代は、映画館にピアニストが雇われていて、場面に合わせてピアノを弾いていた。幻戯はどうせ注釈をばら撒くなら、そういうことも書いて欲しいなあ。

p191 現代音楽(Moderns)◆ この頃ならシェーンベルクとかストラビンスキー。

p191 イタリア協奏曲… ハープシコードで弾いたほうが合う(the Italian Concerto... It’s better on the harpsichord)◆ チェンバロ専用曲の代表、と言ったらバッハ「イタリア協奏曲」BWV971だろう。二段鍵盤の効果はピアノでは物足りない。1930年代はドルメッチが古楽器を作り始めてた古楽第一世代のころ。

p191 バッハは脳味噌にいい(I find Bach good for the brain)◆ フーガなんてとっても論理的な音楽だしね… それでいてバッハには情感がある。

p191 『平均律』の一曲(one of the “Forty-eight.”)◆ バッハで「48」なら「平均律クラヴィア」のこと。何番かは不明だが、フランス風の第5番ニ長調BWV850なんてどう?

p195 ラム(Rumm)

p195 目隠し(Blindfold)

p196 『栄光、栄光、栄光』 (Glory, glory, glory)◆ probably a reference to hymn 455 in the Salvation Army Hymnと [PWC]にあった。「救世軍聖歌455番か」と訳註及び幻戯(g1687, 注122)にあるのは[PWC]由来だろう。Salvation Army Hymnは未調査

p196『みどりもふかき』(Nazareth)◆は"Ye fair green hills of Galilee"が歌い出しで、作詞Eustace Rodgers Conder、メロディは古い英国民謡によるもの。幻戯(g168, 注124)は[PWC]によりヴィクトリア朝の英国で人気があったグノー作曲の"Nazareth"(英訳詞Henry F. Chorley)としている。

p198 ハレルヤ(Alleluia)

p197 ハルモニウム(harmonium)

p198 ハープ、サックバット、プサルテリウム、ダルシマー(harp, sackbut, psaltery, dulcimer)

p200 豚足(とんそく)trotters

p202 ブラマ(a Bramah)◆ 開錠困難を謳っていた。ラッフルズでもお馴染み。幻戯(g172, 注131)

p206 残余財産相続人(residuary legatee)

p209 有名なもの(that famous one)◆ 幻戯(g178, 注134)でも不明

p211 四時半で終業(knock off at half-past four)◆ 当時の労働時間?9時5時じゃなかったの?

p212 椅子(回転式… 最近の型ではない)the chair (which was of the revolving kind, and not the modern type…)◆ どんなのだろう?

p220 『門をひと思いに通り、新しいエルサレムの門を…』(Sweeping through the gates, Sweeping through the gates)◆ 何故か創元・幻戯に注なし。[BP]には記載あり。[PWC]ではTullius Clinton O'Hare作の聖歌"Washed in the Blood of the Lamb"のコーラス部。

p220 ぼけが来た(Going dotty)◆ この感覚はちょっとわからない。本書の裏テーマは「私も歳をとったなあ」という述懐なのかも。

p221 <ルールズ>(Rules)◆ 幻戯(g188, 注140)

p222 十二月三十日

p232 マックス・ビアボームの話に出てきた男(the man in Max Beerbohm’s story)… 「感動を与えるのが大嫌い(hated to be touching)」◆ 幻戯(g197, 注144)の短篇「A・V・レイダー」(1914)に出てくる男

p233 望山荘(HILLSIDE VIEW)

p233 一九三◯年一月一日(JAN 1ST, 1930)

p233 家の中で火を焚くことを許さない(never permit a fire in the house)◆ ヴィクトリア朝の人ってすごいなあ。

p234 ちゃんとした女◆ ここの形容詞はrespectable

p234 乗合バス… 1ペニーで(omnibus... a penny ride)

p235 娘時代は誰でも、水彩画の手ほどきを受けさせられた(as girls we were all brought up to dabble a little in water-colours)

p237 喫茶店(tea-shop)… <ライオンズ>一軒(a Lyons)… ◆ 人口2〜3万人程度なのに喫茶店が8軒とライオンズがある。

p238 楽団もソーダ水売場もない、ありふれた地味な<ライオンズ>(an ordinary plain Lyons, without orchestra or soda-fountain)

p238 全粒粉ビスケット(digestive biscuits)

p241 靴の試し履き(Trying on shoes)

p242 尾行(shadowing)

p246 スコンとバター、紅茶をポットで(scones and butter... and a pot of tea)◆ cupじゃなくてpotで頼むんだね。二人で別々に二つのポットを頼んでる事例があったなあ。

p247 これ以降のネタはとっても興味深かった。かなり面白いのがふんだんに。ネタバレ回避で書けないのが残念。

p255 最愛のルーシィ(My dearest Lucy)

p269 コヴェントリーに住んでたんで、よく冗談の種にしてた(lived at Coventry and we used to have a joke about it)◆ Send to Coventryは意図的に仲間はずれにすること。英Wikiに項目あり。

p297 ポメリー(Pommery)

p302 四・五ポンド 三シリング四ペンス(4½lb. ¾d)◆ 牛肉の塊の値段。電子版の原文は4分の3ペンスと読めるが、流石に安すぎるので3シリング4ペンス(3/4dと表記する)だろう。100gで123円。ずいぶん安い。英国(2023年)だと生肉で265円。

p303 ボーンズ(Bourne’s)◆ 店が閉まる前、六時半には着きたい、と言ってる。ということは閉店は七時か?英Wiki "Bourne & Hollingsworth"

p308 マーシュ・テスト(Marsh’s test)

p315 ブラヴォー事件(Bravo case)◆ 幻戯(g263, 注163) 1876年の事件。

p316 ジーヴズ(Jeeves)◆ 幻戯(g263, 注164)直前のセリフI endeavour to give satisfaction my Lordが真似だったから。

p322 まさしく謎よ(Riddle-me-right, and riddle-me-ree)◆ 幻戯(g267, 注171)「なぞなぞなあに」幻戯も[BP]同様「マザー・グース」から。創元では『魔女の戯れ』のもじりか?とあるが何を指してるのかわからず。

p322 『英国有名裁判全集』(Notable British Trials)◆ 懐かしい!旺文社文庫で分厚い文庫版が出てたことは、もう忘れ去られてるよね。 『ミステリの祭典』に登録しておこうかなあ。(確かめたら、自分で一冊登録済みでした…)

p323 『英国写真』誌(British Journal of Photography)◆ 幻戯(g268, 注177) 実在の写真誌、1854年創刊。

p325 シーザーの妻(Caesar’s wife)◆ Caesar's wife must be above suspicion. Wikitionaryに項目あり。幻戯(g270, 注181) 「カエサルの妻」 ひどい夫だなあ。これ「李下之冠」と似てるようで全然違う。自分や身内への戒めじゃなくて妻(弱い立場の他人)への戒めだから… カエサルの弟またはカエサルの母、ならまだ感じが良いが… まあ夫の権威を傘に威張るバカ女に対して使うなら無問題かな?

p328 先週の『スージーの内緒話』のマダム・クリスタルの欄(in Madame Crystal’s column last week, in Susie’s Snippets)◆ 英国で発売されてたTit-Bitsみたいな週刊新聞か? [PWC]もTitbits風の架空雑誌だろうとしている。一致したので素直に嬉しい。

p329 ダイムラー(a Daimler car)◆ 高級車の象徴

p329 映画(the talkies)◆ ここはトーキーに意味がある。英国上陸1928年だから流行最先端の娯楽だった。幻戯(g273)は「トーキー」と訳しているが「最新流行」というような説明に欠ける。早川(h235)「物語」

p331 ターキッシュ・ディライト(Turkish Delight)◆ 幻戯(g275)も同じ。早川(h237)「トルコ風菓子」 日本ではロクム、ターキッシュデライトとして知られているようだ。

p343 国家(the Crown)◆ 幻戯(g285)「検察当局」 当時の英国には日本や米国のような検察機構は無かった。ここもp101同様「国王側」が一番正確だろう。