シミルボン投稿日 2020.09.24
ミステリとしての書評及びトリビアはWebサイト「ミステリの祭典」に書いています(作中現在の推定や献辞の相手「ジム」の正体もバラしてます!)。
ここではそこにもちょっと書いた“余談”を膨らましてご紹介。Whose Body?が出てくると、長年の私の誤解(多分、皆さまも誤解してる意外なトリビア)を必ず思い出すのです。
さて外国人の名前などに使われる「・(ナカグロ)」お好きですか?私は大嫌いでした。だって本来Dorothy L. Sayersなのに「ドロシー・L・セイヤーズ」ですよ。Lの後のピリオドは省略符号という意味があるのだし、語間も原語通り空白で良いのに余計な点!全角文字なので幅を無駄に取るし… 「G・K・チェスタトン」なんて特に許せない!「G. K. チェスタトン」でいいじゃん、ということで、以前の私は私的な場では「ドロシー L. セイヤーズ」などと表記していました。空白だと文字区切りがちょっと不明瞭なんだけど… 「エラリイ クイーン」とかね。(でも某社独自ルールのように文字区切りにダブルハイフンを使う「エラリイ=クイーン」は変テコ。複合名(ジャン=リュックなど)の時と紛らわしいから、是非やめて欲しい)
この文字区切りとしてのナカグロ表記、調べると昭和21年の文部省教科書局の案が一応の根拠とされている。
ナカテン: 1. 並列… (中略) 8. 外来語のくぎり、9. 外国人名のくぎり… 並列にはテン「、」(例: ジョージ・ワシントン、アブラハム・リンカーン)
案なので守らなくても良いけど、対案がないので従っている、というのが現状かな? まー縦書きだと、この表記じゃないと結構困るんだけどね… だから日本語オリジナル表記法だと思ってたんですよ、2019年9月にこのブックカバーを見るまで。
これT. Fisher Unwin社の初版ダストカバー(英国1923)なんですが、著者名に注目。Dorothy・L・Sayersになってます!
調べると古いラテン語碑文(A.D. 200年以前)でスペースの代わりに語の区切りとして使われてたinterpunctというものらしい。(カヴァーの袖では通常通りDOROTHY L. SAYERSとなってる) 時々、紋章のモットーの語の区切りにも使われてますよね? 写真はウィムジイ家の紋章。
interpunctは英Wikiにも項目があるので詳細はそこを参照してください。
それまでは嫌々ナカグロを使ってた私ですが、これを知って以来、すっかりナカグロ派です。だって西洋でも由緒ある使い方なんですぜ。外国人名に使って当然でしょう…
※ ご注意いただきたいのは、あくまでスペースの代わりなので原語が「F. B. I.」なら「F・B・I」と表記するのが正解。省略符としてのピリオド自体は省略される、という表記法です。