十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

イゾルデの頓知

今週のお題「乗ったことがある動物」

 

トリスタンとイズー(イゾルデ)の物語でイズーがとっさにみせた頓知。

 

夫である王にトリスタンとの仲を疑われたイズーは、神聖裁判(中世では trial は「試し」だった。焼けた鉄を押しつけられたり、水に投げ込まれたり。証言が嘘だったら神が裁くのだ)の場で、証言を求められた。

イズーの言葉は、

この世にあるすべての聖遺物にかけて、/今しがた駄馬のかわりをつとめ、/浅瀬の向こうに運んでくれた癩病、/それに我が夫のマルク王以外に、/いかなる男も我が股の間に入ったことなし。

(ベルール「トリスタン物語」、『フランス中世文学集1』、p.256-257)

 

イズーが裁判の場に行く途中に川があり、とっさに病人(実はトリスタンの扮装)を駄馬のように使い、病人の背にまたがって川を渡ったのだ。

それでイズーの証言に嘘偽りは一切無くなり、イズーが神の裁きを恐れる必要はなくなった。

その態度をみて、皆納得したのだろう。(挙動不審だったら川に放り投げられてたのかな?)

 

おお、素晴らしい頓知、と思っていたが、あらためて考えると

・当時の癩病って全然忌み嫌われてないの? 王妃がバリバリ接触してますよ。

・馬の乗り方も足をがっと広げてたんだね。横坐りじゃなくて。

 

動物に乗る、で思い出したヒトコマでした…

 

なお、私自身は動物に乗った記憶が全然ありません…