十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

O・ヘンリー「賢者の贈り物」の金銭感覚

 

The Gift of the Magi by O.Henry (初出 The New York Sunday World 1905-12-10 as "Gifts of the Magi")

素敵な絵本を見つけて、そういえば出てくる金額って、現在価値どれくらいかな?と気になった。

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計算するとびっくり。米国消費者物価指数基準1905/2025(36.1倍)で$1=5291円。ということは手持ち1ドル87セントは9894円、これは良いとして週8ドルの家具付きアパートの家賃は月額18万円、夫の稼ぎ週20ドルは月収46万円、美しい髪の値段20ドルは10万6千円。 みんな高過ぎる… もしかしてどこかで原文の価格が、後日改訂されてるのかも?と思ってGutenbergで収録短篇集The Four Million(1906)を見ても額は同じだった。

同じ短篇集に値段がたくさん書かれている作品 An Unfinished Story があって、百貨店の売り子が主人公、アパート代週2ドル(月45852円)、週給6ドル(月収13万8千円)、夕飯15セント(794円)、朝食10セント(529円)と非常にまともな換算結果である。なので消費者物価指数換算が間違ってる訳では無さそう。

これはいったいどういうことだろう?月収46万円は全然貧乏じゃないよ。それなのに節約してやっと蓄えたお金が1ドル87セント… この二人、浪費家夫婦だったのだろうか… でもこの家賃(月18万円)は最低クラスの住居だと書かれているし…

本当にいったいどういうことなんだろう?

 

(2025-04-04追記)

当時の統計を確認すると、週給20ドル以上稼ぐ男性は、16歳以上の男性労働者の上位6%(1905年の統計)。Census of manufactures: 1905. Earnings of wage-earners - Full View | HathiTrust Digital Library

家賃の相場(1909年の統計)は三部屋で$2.33、四部屋で$2.92、五部屋で$3.63、六部屋で$4.22(ニューヨークは高い、特にマンハッタン、ということなので一番高い値を採用した)。Bulletin of the United States Bureau of Labor, Nos. 1 - 100, March 1911 : Bulletin of the United States Bureau of Labor, No. 93, Volume XXII | FRASER | St. Louis Fed

この短篇のいずれの金額も、当時の水準を大幅に超えている。金額を3/8に割引いて、週給8ドル(上述の63%: 中の下レベル)、家賃週3ドル程度が話の内容からは相応しいと思う。

発表当時の読者はどう思ったのだろう?到底稼げるはずもない週20ドルという高給、貧乏と言ってるのに週8ドルの家賃… アホくさ、と思わなかったのか?