十六 × 二十

本について。時々他のネタも。心臓が悪いのでコメント不可です…

連載ムッシュー・ルコック

ムッシュ連載55(第1部第37章の1)

(左) Hotel de Cluny in 1850 - by Achille Poirot - Paris (右) View of the Musee De Cluny in Paris, Series " Villes De France, Paris VIII" 952. Oilette postcard, 1917 XXXVII マリアンブールホテルの女将はメにお金を渡していた。葉巻の購入が有無…

ムッシュ連載54(第1部第36章の3)

Rue de Saint-Quentin, Paris 撮影Hippolyte Blancard 1890年ごろ。 「ショールと帽子を身につけたら、出かけます!」 ≪36-115≫ ミルナー夫人は若い刑事にそう言った。 ≪36-116≫ 四十歳を過ぎているが、未亡人で、金髪、そして、その地区の警察署長も認める…

ムッシュ連載53(第1部第36章の2)

The Théâtre de l'Odéon c.1830 ルコックが古着屋にいたのは五分足らず。だが、外に出てみると、メとアプサント親父は姿を消していた。 ≪36-58≫ しかし、彼は心配しなかった。 ≪36-59≫ パリを駆け巡るこの人狩り計画を、年上の同僚と練り上げたとき、若い刑…

ムッシュ連載52(第1部第36章の1)

Rue Saint Jacques, du boulevard Saint Germain. Paris Ve. 1866. 撮影Charles Marville XXXVI ルコックはやっと息がつけた。 ≪36-1≫ それまで彼は、何か些細なことを忘れたか、見逃していて、歯車がすっかり狂ってしまったのではないか、と必死に記憶を探…

ムッシュ連載51(第1部第35章)

(上) Les Tuileries 1850年ごろ。手前がチュイルリー宮殿、すぐ奥がルーブル宮殿。左横の大通りがリヴォリ通り。司法宮は画面中央右のシテ島の手前側にある。(下) Le pont au Change、画Angelo Garbizza (1777-1813) 1800年ごろか。左側の建物は司法宮。現在…

ムッシュ連載50(第1部第34章の2)

Bureau de placement (上) Charles-Émile Damour画 (1888)(下) 絵葉書 "1, rue des Prouvaires. Détails de la façade et balcon" (1900頃) 三階に看板が見える。 ルコックの喜びは凄まじかった。 ≪34-57≫ まさか、そう、まさか、そんな協力まで得られるなん…

ムッシュ連載49(第1部第34章の1)

Caricature représentant l'évasion de Lavalette, resté fidèle à Napoléon 1er et condamné à mort en 1815 par un tribunal monarchique, lors de la Restauration.(ナポレオン1世への忠誠を貫き、王政復古期の1815年に王党派法廷で死刑判決を受けたラヴ…

ムッシュ連載48(第1部第33章の2)

The Depot, at the corner of Quai de l'Horloge and Rue de Harlay, 1860年ごろ。撮影Albert Brichaut。監獄のドアが並んでいる。連載40に掲載した司法宮平面図の左上辺りだろうか。メは特別な「隔離房」なので、こういう感じではないかも。 「隔離房」へ続…

ムッシュ連載47(第1部第33章の1)

当時の50サンチーム銀貨。(参考)10円硬貨は直径23.5mm、重さ4.5g XXXIII なんという失望、簡潔すぎて曖昧な手紙だった。居合わせた者たちが、胸を圧せられ、息を切らして見守り、熱狂的な期待が著しく高まっていたというのに。 ≪33-1≫ 暗号のままでも、解読…

ムッシュ連載45(第1部第32章の1)

'cellule' Le Dépôt, Palais de Justice, Photographie d'Albert Brichaut. c.1898 独房、ルコック時代も同じだったと思われる。 XXXII 被告メが入っている狭い独房の上には、屋根を保守するために建築家が設けた屋根裏部屋のような空間があった。 ≪32-1≫ 床…

ムッシュ連載44(第1部第31章)

(左) Boulevard Beaumarchais, 1900 (右) coin boulevard Beaumarchais et rue de la mule, Paris, 01/06/1914 - 30/06/1914, Stéphane Passet(1875-1941) ≪30-94≫以降のカフェがあるあたりの風景 XXXI 湖の真ん中に重い石を投げ込むと、大きな水しぶきが上…

ムッシュ連載42(第1部第30章の1)

(左) Esplanade des Invalides, 1860s, by Florent Grau (生没年不詳, fl. 1855-1864)。ステレオ写真から。 (中) Esplanade des Invalides, 1870?, 制作者不詳。ステレオ写真から。(右) Esplanade des Invalides, c1880, 制作者不詳。ステレオ写真から。 XX…

ムッシュ連載41(第1部第29章)

(左) Rue de la Paix, Ernest Ladrey(1830-1889) 1860s (右) Rue de la Paix, Paris, with the column of Vendôme, Anonymous, c. 1860 - c.1885、立体写真から復元。 XXIX 一人残されたセグミュラ殿は、はっきりした意志というより、むしろ習慣という本能的…

ムッシュ連載40(第1部第28章)

PALAIS DE JUSTICE premier étage, Île de la Cité Paris, 1900 赤字はこちらで付けた、Gemini調べのもの。詳細は詰めていない。(a) 左翼の四階(troisième étage)の予審回廊≪15-64≫は多分この辺。≪30-30≫で判事とルコックがいた所。(b) 狭くて陰気な回廊 ≪28…

ムッシュ連載39(第1部第27章)

(左) Rue de la Huchette, de la rue de la Bûcherie. Ve arr. Vers 1866.(中) Rue de la Sainte-Chapelle 1838(右) Rue Sainte-Anne と Quai des Orfèvres. Paris. 1906 XXVII あらゆる場所でルコックを探し、見つたら連行せよとの命を受けたセグミュラ殿の…

ムッシュ連載38(第1部第26章)

Daumier "Les gens de justice"連作(1848)より。調べが行き届かず、誰がgreffierで誰がhuissierだか、よく判らない。三番目の絵では、法廷では書記官も黒法衣と帽子姿である。背広のが執達吏なのかなあ… XXVI セグミュラ殿は、自分の職業を惜しみなく愛し、…

ムッシュ連載37(第1部第25章の2)

(左) "La rue du Moulin des Près, 13ème arrondissement, Paris" F. ABEILLÉ, En 1895 (右) "Rue du Moulin-des-Prés, circa 1900" Germain Eugene BONNETON 屋根裏部屋で、ドアに背を向けて座っていたルコックは、その奇妙な訪問者の顔をチラリとも見るこ…

ムッシュ連載36(第1部第25章の1)

(左) "Butte aux Cailles, près la Barrière de Fontainebleau en 1855 / 9" Alfred Alexandre DELAUNEY, 1869, graveur (右) "Le Moulin de la Butte aux Cailles, Paris" Louis-Alphonse DAVID (1798-1849), date unknown, dessin当時の絵には、風車が良く…

ムッシュ連載35(第1部第24章)

France Charenton Asylum Psychiatrique c1858 (立体写真から) XXIV その年のマルディグラは、大変陽気なお祭り騒ぎで、つまり、公設質屋やダンスホールは大繁盛だった。 ≪24-1≫※ mardi gras: 事件は謝肉祭の日曜に起こった。その二日後の火曜日はマルディグ…

ムッシュ連載34(第1部第23章の2)

挿絵Bayard Jones ("Monsieur Lecoq" Charles Scribner's Sons, New York 1906) ≪23-39≫の場面 高さ十メートルから氷水の桶が頭に落ちて来たとしても、マリアンブールホテルの女将のこの言葉に比べれば、若い刑事に衝撃を与えるものではなかった。 ≪23-63≫ …

ムッシュ連載33(第1部第23章の1)

(左)Rue de Saint-Quentin, 10ème arrondissement, Paris. Vers 1890. 撮影Hippolyte Blancard (1843-1924) (右)Gare du Nord, Paris - circa 1850. 旧駅舎正面 XXIII 長く、狭く、天井が低く、番号の付いた小さな扉がたくさん並んでいて、まるで安宿の廊下…

ムッシュ連載32(第1部第22章)

Chez le juge d'instruction, Edouard GELHAY(1856-1939), huile sur toile, vers 1890. 衛兵、被告、書記、予審判事が見える。ここでも予審判事は背広姿である。 XXII 被告が退出すると、セグミュラ殿は膨大な努力を空しく費やした後の、疲れ果て、打ちのめ…

ムッシュ連載31(第1部第21章の2)

Honoré Daumier, « L'interrogatoire », Le Charivari, 20 octobre 1845 「寄り道5: 予審判事マニュアル1836pt2」では、調書作成時には制服を着て実施すること、と書いてあった(第七章第二節)。連載23(1897年のイラスト)では予審判事は普通の背広である。 尋…

ムッシュ連載30(第1部第21章の1)

bottes と pantoufles、19世紀フランスのもの。 XXI これらの繊細かつ厄介な身元確認の問題は、今までに何度も現れ、司法を絶望させてきた。 ≪21-1≫ 鉄道、写真、そして電信。捜査の手段は増えたが、無駄だった。今日なお、巧妙な犯罪者たちが、判事から正体…

ムッシュ連載29(第1部第20章の2)

Thomas Jones Barker "Napoleon at Waterloo" 1879、ナポレオンに話かけているのは副官General Gaspard Gourgaudだろう(Grok調べ。私は未確認)。 もっともらしい嘘とありえない真実が示された場合、司法という、人間が作った、すなわち誤りを犯しうる制度は…

ムッシュ連載28(第1部第20章の1)

1861年以前のGare du Nord: Auguste ou François-Auguste Trichon(1814-1898)作の木版画に彩色したもの XX 監獄長、その二十年に及ぶ刑務所と受刑者に関する実務経験は、神託に等しい権威を彼に与えていた。今やほとんど何が起きても驚かなくなった、この観…

ムッシュ連載27(第1部第19章)

CHATELAUDREN. - Arrivée par la route de Guingamp, Quartier de Mississipi (Carte postale - Châtelaudren 1917) XIX 「被告のお喋りは、審理をすぐ整える」と司法宮の古い格言は言う。 ≪19-1≫※ Prévenu bavard, cause bien instruite 実際、判事の監視下…

ムッシュ連載26(第1部第18章)

挿絵: 中村英夫 「少年少女世界の名作文学22 フランス編4 : ルコック探偵尾行命令」氷川瓏訳(小学館 1964) ≪17-57≫のあたりか XVIII 尋問を受ける被告二十人のうち、少なくとも十八人は「隔離房」の静寂の中で検討し練り上げられた、完璧な弁護戦略を携えて…

ムッシュ連載25(第1部第17章)

L. Boulanger, Paris 1884、挿絵Henri Lanos(1859-1929) 画像は部分。≪17-42≫の場面。ドアのデザインがガサい。殺人犯の風体と、後ろの衛兵に注目。 XVII 沈黙に利ありと考え、自分に不利な証拠はないと信じ込んでいる男から、自白を引き出す。それは確かに…

ムッシュ連載24(第1部第16章の3)

(左) Tavern in Paris, 1850, France (右) Scene in a Cabaret in The North of France, 1871 どちらにも前掛けをした太った女将が描かれている。 あらゆる悪徳を利用し、あらゆる恥辱に耐えてきた、この忌まわしい老女たちは、最も鋭い洞察力さえ欺くほどの…